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リオの少し後ろについて歩いていると、大きな扉の前で、リオがピタリと止まる。
振り返って俺をジーッと見るリオにドキドキしていると、いきなりとても人懐こい笑顔で名前を呼ばれた。
「カナデ様、俺に気を使う必要はありません。リオと呼んで、何でも言ってください」
「あ…はい。え~と…何でも…。じゃあ言っていい?」
「はい、何なりと」
「俺、この国に来て、知ってる人ってアルとシアンだけなんだ。だから、同じ歳だっていうリオと仲良くなりたい。リオ、俺のこともカナデって呼んで。あと敬語もいらない。だって、友達に敬語なんて使わないだろ?」
言ってしまってから少し恥ずかしくなって、俺は頭をかきながら照れ笑いを浮かべる。
リオは、暫く固まって俺を見ていたけど、フッと破顔して手を差し出した。
「ふふ、わかったよ、カナデ。俺も歳の近い友達が出来て嬉しい。カナデは見た目だけでなく、中身も不思議なんだな」
「えっ。俺…なんか変?」
差し出された手を握ろうとして、慌てて手を引っ込めて自分の身体をペタペタと触る。
「ぷ…っ!違うよ!どこも変じゃない。その美しい黒髪が珍しいってことだよ。それに、アルファ厶様のお気に入りだから、もっと偉そうにしてるのかと思ったら、全然気さくで優しいからさ。俺、一瞬でカナデを好きになった。もっと仲良くなりたいと思う」
「リオ…。ありがとう。リオはこの国で出来た俺の初めての友達だよ。よろしくなっ」
俺はリオの手を両手で握って、大きな声を出した。
「うん、よろしく。ところで最初にカナデを案内をするのはここ。アルファ厶様が家来に命令を出したり外国からの使者と会ったりする部屋なんだ。いろんな式典もここで行われる。今は誰もいないけど、静かにしてね」
「う、うん…」
ゴクリと唾を飲み込んで、ギィーと重い音を立てながら内側へと開いた扉の中に、足を踏み入れる。
一歩中に入って、俺は「うわぁ…」と感嘆の声を漏らした。
どれくらいの広さかはよく分からないけど、強いて言うなら学校の体育館くらいの広さだろうか。
入口から遠く向こうの端に見えるのは、アルファ厶が座る玉座だろう。
玉座の後ろは一面ガラス張りになっており、眩しい光が射し込んで、荘厳な空間になっている。
口を開けたまま高い天井を仰ぐと、様々な色の花の絵が、一面に描かれている。
「カナデ。ふふ、首が痛くなるよ?ほら、もっと向こうに行って見ていいよ」
「え?あ、うん…。ありがとう」
俺はリオに背中を押されて、玉座の前まで来た。
金細工に赤い宝石が埋め込まれた美しい椅子。その隣には、一回り小さな同じ細工の椅子がある。
ーーふふっ、アルがここに座った時に、隣に俺が座ったりして。
俺とアルファ厶が並んで座る光景を思い浮かべて、ほっこりとしていた気持ちが、リオの言葉で一瞬で消え去った。
「この大きい方は、当然アルファ厶様の椅子だよ。そして少し小さいこっちの椅子は、アルファ厶様の婚約者がいずれお座りになる椅子だ」
「…え?婚約…者…」
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