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ナジャがラルクの隣に馬を並べ、レオナルトに声をかける。
「レオナルト様、あの男、どこかで見かけたような気がしてずっと考えていたのですが…。確か、レオナルト様の即位式の時、ウィン国王の代わりに来賓で来られた…」
「あ!ウィン国の王子、バルテルか!何となく見た気がしたと思ったのは、そういうことか。あの時はもっと幼かったから、すぐにはわからなかったぞ」
「はい。あの当時は、17、8歳だった筈。あの頃よりも身長も伸びて顔つきも変わられた。すぐには分かりません」
「不味いな…。バルテルは、確か綺麗な物を集めるのが趣味だと聞いたことがあるぞ」
「それは不味いですね…」
2人の顔を交互に見て話を聞いていた俺は、「何が不味いの?てか、さっきの人、知ってる人だったんだ?」と首を傾けた。
「カナデ。いいか?スイ国に入るまで、絶対に俺から離れるんじゃないぞ。いや、王城まで決して離れてはダメだ」
「なんで?」
「先程の…金髪の男。ウィン国の王子だ。あいつは綺麗で珍しい物が大好きなのだ。絶対にカナデに目をつけたに違いない。今頃手に入れたいと思っている筈だ。今も後をつけられてるかもしれん。ナジャ、先を急ぐぞ」
「はい。このまま行けば、今日の夜にはスイ国に入れる筈です」
「よし。カナデ、また腰が痛むかもしれんが、耐えてくれよ」
レオナルトが、俺の額にキスを落としながら言う。
俺は慌てて顔を遠ざけると、身体の向きを変えて前を見た。
「大丈夫だよっ。馬に乗るのも慣れてきたから。でも、レオンもナジャも心配し過ぎじゃない?アルにしろ、そのバルテル王子?にしろ、俺を追いかけてなんか来ないって」
俺は平凡などこにでもいる男子だ。髪の色が黒いからって、皆が皆、興味を持つとは思わない。
「なんか、ややこしい所に来ちゃったよなぁ……」
大きな溜息を吐いてポツリと呟く。
2人が不思議そうな顔をして俺を見ていたけど、俺が「どっちの方へ行くの?」と前に見える2つに分かれた道を指し示すと、「左だ」とレオナルトが答えて、右手で手綱を握り、左手で俺をしっかりと抱きしめた。
レオナルトもナジャも、強い魔法の力を持っている筈。
アルファムとやり合った時の、アルファムの炎の力はもちろんだけど、二人の水の力もすごかった。でも水の力は、匂いや気配を隠すのには最適だけど、探知する力が乏しいらしい。
だから、風の力を持つバルテル王子が、緩やかな風の中に混じえて、追従の細かな粉を飛ばしていたことに全く気づけなかった。
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