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「え?」
ゆっくりと両手を持ち上げて顔を下に向ける。
俺の両腕と両足の服の生地が裂け、ポタポタと真っ赤な血が滴り落ちていた。
「な…なんで…」
「なあおまえ、あそこで情けなく震えているスイ国王から俺のことを聞いてるだろ?俺は風の国の王子だ。俺は風を操る。自由自在に操ることが出来る。風の力で、おまえの華奢な身体を切り刻むことなど容易いのだ。俺は、おまえの黒髪と容姿がとても気に入った。だが、中身はなくともよい。それに、おまえは俺に刃向かい痛みを与えた。絶対に許せない。だから殺して、身体だけを持って帰ると決めた」
「なっ!はあっ、はあっ…」
一拍置いて痛み出した腕と足が震えて、その場に倒れそうになる。
だけど、ここで倒れてしまったら終わりだ。
こいつは、アルファムやレオナルトとは全く違う。
会ったばかりの俺を、躊躇なく傷つけた。そして今、殺すとはっきり言った。
この世界に来て、初めて俺は怖いと感じた。命の危険を感じた。
痛みと恐怖で呼吸が早くなって苦しい。今にも意識を失いそうだ。
こんな時に思うのは、アルファムのこと。
アルファム、俺は、アルファムとライラが仲良くしてる姿を見たくなくて、あの城を出たんだ。アルファムに冷たくされるのが怖くて、逃げたんだ。
だけど本心は、誰の傍にいてもいいから、アルファムを見ていたかった。たとえ酷くされてもいいから、アルファムの大きな手で触れられたかった。
自分の意思でアルファムから離れて、もうすぐ炎の国を出るという所まで来て、そして今、殺されるかもしれない目に合っている。
チラリと腰に括りつけた剣を見た。
風が相手では剣は使えない。ましてや、傷ついたこの腕では、持つことも叶わない。
レオナルトが俺を助けようと、這いずりながら手を伸ばしている姿が見える。だけどレオナルトもナジャも、動くこともままならず術を出すことも出来ないようだった。
「ほう…、切れた服から覗く肌のなんと白いことか。おまえを裸にして、俺の宝物と並べて飾ってやろう。楽しみだ」
バルテル王子の冷たい声を浴びて、背中にぞくりと悪寒が走る。
俺は、ひどく緩慢な動作で振り返った。
視線の先で、バルテル王子が楽しそうに笑いながら、右手を真上にあげる。その手を振り下ろした瞬間、ヒュン!と風を切る音と共に、何かが迫り来る気配を感じた。
「アル…っ!」
俺は死を覚悟して、愛しい人の名前を叫んだ。
刹那、視界が大きな影に遮られ、俺の身体が強く抱きしめられる。
ここにいる筈のない大好きな人の匂いと温もりに、抑え込んでいた気持ちが一気に溢れ出した。
「あ…アルっ!!」
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