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混乱
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その日の夜、ここ数日間バタバタとしていた城内が、一層慌ただしくなった。
俺は部屋の外が気になって、食事後に寛いでいたアルファムの膝の上から降りる。
ドアへ向かおうとするとアルファムに手を握られて、俺は振り返ってアルファムを見た。
「アル、何か外が騒がしくない?俺、気になるんだけど」
「まあ待て。すぐに呼びに来るだろう。たぶん、弟が来たのだ」
「えっ、アルの弟が…」
俺がドキドキとしながらドアを眺めていると、すぐに足音が近づいて、ドアの外からシアンの声が聞こえてきた。
「アルファム様、ローラント様がいらっしゃいました。こちらへ来て頂きますか?」
「いや、いい。俺から出向く。部屋に案内して待っててもらってくれ」
「はい」
シアンの声が止んで、足音が遠ざかって行く。
「カナ」
アルファムに呼ばれて首を傾げると、アルファムが立ち上がって俺を抱き寄せた。
「行こうか。俺の弟、ローラントに会いに」
「え!俺も行っていいの?」
「当たり前だ。俺の大切なカナを紹介したいし、俺の大事な弟に会って欲しい」
「わ、わかった。俺、変じゃないかな?」
会うとなると急に緊張してきて、俺は髪の毛を撫でつけたり服を引っ張ったりする。
アルファムは、そんな俺を見て破顔すると、俺の耳朶に唇をつけた。
「大丈夫だ。おまえはいつだって、どんな格好をしていようとも可愛い」
男なのに可愛いと言われるのは複雑だけど、アルファムは特別だ。もっと言われたいと思ってしまう。
俺も笑って頷くと、アルファムに手を引かれて部屋を出た。
部屋の外にはすでにシアンが戻って来ていて、アルファムと俺の先に立って進んで行く。
アルファムの部屋からさほど遠くない部屋の前で立ち止まり、シアンが深く頭を下げた。
「ローラント様お一人で、お待ちでございます。この部屋は、王族の方しか使用できませんので。従者の方達は、別の塔の部屋に案内しております」
「シアン、ご苦労だった。ここからは俺とカナだけでいい」
「わかりました。ですが、外に兵を配置しておきます。無いとは思いますが、万が一のことを考えて…」
アルファムは無言で頷くと、部屋の中に向かって「入るぞ」と声を掛けた。
返事を聞くよりも早く扉を開けて、アルファムが俺の手を引いて中に入る。
部屋の真ん中にある椅子に腰掛けていた男の人が、慌てて立ち上がりこちらに早歩きで寄って来た。
「兄上!」
明るい朱色の髪の、まだあどけなさが残るアルファムに似た顔立ちの少年が、アルファムの名前を呼ぶと、勢いよく抱きついた。
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