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そろそろ部屋に戻ろうとレオナルトに挨拶をして、「ホルガー様を手伝ってくる」というリオとも別れて廊下を歩いていた。
この城に来てから2ヶ月近く経っているのだけど、俺はまだ、城の中を全部把握してる訳では無い。
特に客間ばかりのこの辺りは一度しか来たことがなく、先程から行ったり来たりを繰り返していた。
「まずい…。迷ったのか?俺…」
行き止まりの壁を前に大きく溜息を吐いて項垂れる。
客間にはそれぞれ名前がつけられてるようだけど、全く同じ装飾の扉が等間隔に並び、目印になる様な物がない。
「言ったら自分の家みたいな城で迷うって、情けないよなぁ」
ブツブツと呟きながら元来た廊下を進み、角を曲がろうとして、前から来た誰かとぶつかり尻もちを着いた。
「わあっ!…あたた…っ」
「おお、すまぬ。大丈夫か?」
目の前に差し出された手を反射的に掴むと、その手が引かれて俺を立たせてくれる。
ぶつかった拍子に打った鼻に手を当てて顔を上げると、銀色の長い髪に金色の瞳の美しい男が、無表情に俺を見ていた。
「あっ…、すっ、すいません!ちゃんと前を見てなくて…。あなたは大丈夫でしたかっ?」
「…俺は大丈夫だ。おまえの方が衝撃を吸収して転げたからな。…ふむ、これは…」
この銀髪の人は、つい先程見た月の国の人だ。しかも身なりからして、多分、王族だと思われる。
そんな人に顔面からぶつかるなんて、俺はどんな不敬罪に問われるのだろうか…と困惑していると、男が手を伸ばして俺の髪をつまみ上げた。
顔を寄せて髪をガン見し、遂には両手で俺の髪を触り始める。
困って男の後ろにいた従者らしき人に目で合図を送るけど、苦笑いをして目を逸らされてしまった。
仕方なく俺は小さな声で、「あのー…、俺の髪が何か…」と聞いた。
「ん?ああ、すまない。初めて見た髪色だったから、つい。君、美しい髪色をしているな。この国の者か?」
「…俺は遠い所から来ました。生まれはエン国ではないです。でも、今はエン国の民です」
「ふむ…」
男は頷くと、ようやく髪から手を離した。だけど今度はその手で俺の顎を持ち上げて、至近距離から顔をジロジロと見てくる。
ーーええ…、何この人。俺、早くアルの所に戻りたいんだけど…。
目線を合わせられなくて逸らせていると、額に柔らかい感触がして、驚いて男を見た。
「おまえ、髪だけでなく美しい顔をしている。俺の好みだ。俺はシルヴィオと言う。今日の式典が終わったら、俺と一緒に月の国、ルナ国へ来い」
「…は?…はあっ!?むっ、無理です!俺はこの国に大切な人がいるしっ。その人の傍から絶対に離れないしっ。失礼しますっ!」
俺は一息にまくし立てると、顔を振って男の手を振り解き、全力で走って逃げた。
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