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再び薄く目を開けて、周りの様子を見た。
たぶんここは、馬車の中なんだろう。前から馬の走る足音が聞こえるし、この乗り物も、相変わらずガタガタと揺れ続けている。
そして俺は、シルヴィオ王の膝の上に頭を乗せて、横になっているようだった。
ーー早くここから逃げ出さなきゃいけない。時間が経てば経つほどアルファムから離れてしまう。
そう気持ちが焦るのに、身体がとても重く感じて動かないし動かせない。
ーーせめて腕輪の石を窓から落としたい。そうすればアルがすぐに見つけてくれるのに…。
だけど腕を持ち上げる力も出ない。
何とか力を入れると、指先だけが微かに動いた。
「なんだ。もう気がついたのか?…ふむ、おまえは俺の魔法が効きにくい体質なのかもしれない。もう一度、強いものをかけておくか…」
目を閉じて眠っていると思っていたシルヴィオ王が、少し驚いた様子で俺を見ていた。
シルヴィオ王の目を盗んで、探知の魔法が施された赤い腕輪の石を、一粒ずつ落としていこうと思っていたのに…。
起きていたことを気づかれ、その上更に強い魔法をかけると言う。
そんなことをされたら益々逃げられなくなってしまうし、怖い。
俺はゆっくりと首を横に振り、口だけを動かして『いやだ…』と繰り返した。
「俺は勘が鋭い。おまえ、今、よからぬ事を考えていただろう?せっかく上手く連れ出せたのに、逃げられるようなヘマはしない。さあ、もう暫く深く眠るがいい。目覚めた時には、月の国に着いてるだろう」
そう言いながらシルヴィオ王が、俺に掌を向ける。
俺の上着の内側に、護身用に渡された短剣が入っている筈だ。せめてそれを握ることが出来たなら…。
顔を歪めて首を振り続ける俺の額に、シルヴィオ王の手が触れる。
直後にまた心臓が大きく跳ねて、瞼が下がり深い眠りの中へと落ちていった。
夢なのか現実なのか分からないけど、何度か薄く目を開けて、話し声を耳にした。
途中で馬車を変えたのか、次に目を開けた時に見えた車内が変わっていた。
その次には視界が暗くなっていて、窓からの月明かりに今は夜なのか…と気づいた。
夜なのに前方がとても明るくて、『俺の魔法で道を照らすから馬を進めるのに何の支障もない』とシルヴィオ王が話す声が聞こえた。
次にはまた明るくなっており、「昼過ぎにはルナ国に入るぞ」と言う、シルヴィオ王の楽しそうな声がした。
誰かと話してるのだろうかと不思議に思って、また目を閉じる。
その時、向かい側から「ルナ国に入りましたら、王城までは一気に翔んでいきましょう」と言う、若い男の声が聞こえてきた。
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