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月の国
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この世界では、どこの国の城も似たような造りなのだろうか。
飛翔馬に乗って1時間程で着いた城は、エン国の城と似ていた。
ただエン国は、赤の装飾が多かったけど、この城は全体が白い。白を基調とした中に、所々色んな色を差し色に使っていて、とても上品で落ち着いた感じがする。
城に着いて馬を降りてから、俺はシルヴィオ王にがっちりと肩を抱かれたまま部屋に連れて来られた。
逃げ出す隙など微塵もなかった。
でも逃げ出した所でまたすぐに捕まってしまうだろうから、少し落ち着いて考えようと思った。
連れて来られた部屋は、20畳はある広さにテーブルとソファ、ベッドと収納棚があるだけの、真っ白な部屋だった。
「ここがおまえの部屋だ。窓があるが、暫くは開けられないように魔法を施しておく。部屋の外へは自由に出てもいいが、城の外は出るな。それに常に見張りをつける。食事はこの部屋へ運ばせる。それとこちらの扉だが…」
部屋の側面に一つだけある扉。
何となく扉の向こうに何があるのか気づいた俺は、嫌な顔をしてシルヴィオ王を見た。
「そんな顔をしても帰してはやらんぞ。この扉の向こうは俺の部屋だ。俺がいる間は、この扉の鍵は開けておく。俺は自由におまえの所へ来るが、おまえも俺の所へ来ていいぞ」
「…行かない」
「ふっ、なら俺が行くだけだ。今日はゆっくりと休め。食事の時にまた来る」
そう言うと、シルヴィオ王はやっと俺の肩から手を離して出て行った。
俺は、強く掴まれて痛む肩を擦りながら、部屋の中を見回す。
とりあえず、牢屋とかに入れられなかっただけマシかな…と思っていると、視線を感じてそちらに顔を向けた。
ずっとシルヴィオ王の傍にいた若い男が、まだ部屋に残って俺を見ていた。
「あの…まだ何か?」
「いや…。珍しい髪色なのでつい。俺はセリムと言う。シルヴィオ様の側近だ。何か困ったことがあれば、俺に言ってくれて構わない」
「…あ、りがとう…ございます」
「ふっ、そんなに畏まらなくてもいい。普通に話してくれ。ずっと眠っていたとはいえ、疲れただろう?何か飲み物を持ってくるから座って休んでて」
「ありがとう…」
セリムは笑って頷くと、部屋を出て行った。
ーーなんかいい人っぽい…。俺の知る限り、リオやナジャやセリム、王様の側近って皆優しい。
無理矢理連れて来られて不安しかなかったけど、少しだけ気持ちが和らいだ気がした。
ソファーに座ると、背もたれに頭を乗せて目を閉じる。
ーー今頃、アルはどうしてるだろう。俺がいなくなったことに気づいて大騒ぎになってるよね…。またアルの傍からいなくなって、アルを悲しませてるかな。アル、ごめんね。いつも心配ばかりかけて。助けに来て欲しいけど、アルも、他の誰かも、傷つくことになるのは嫌だ。でもそう思うのは、俺の単なる我儘なのかな…。
閉じた瞼の裏が熱くなり、目尻から涙が零れて耳の穴へと流れる。
やっとアルと幸せになれると思ったのに。
なんで皆んな邪魔をするの。
どうか俺とアルを引き離さないで。
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