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さすがに寝すぎて頭がボーッとしてきたので、洗面台に行って顔を洗った。
部屋に戻り、棚の中にかけてある上着から短剣を取り出す。
これは、本当にどうしてもの時の護身用。長い剣と違ってまだ扱い慣れないけど、アルファムが持たせてくれた、柄にとても綺麗な装飾が施された大事な物だ。
俺は、それを腰に括りつけて、窓の外を見た。
日が落ちて薄闇に包まれ始めた空に、銀色の半月が浮かんでいる。
ーーここは月の国だからかな。月がとても明るく見える。
暗くなってきた為、部屋の中に自然と灯が灯る。
いよいよだ、と緊張してゴクリと唾を飲み込んだその時、扉がノックされてサッシャが入って来た。
「カナデ、食事を持って来たよ。食べられるだけ食べたら、行くよ」
「…うん」
白のシャツにカーキ色のベストを着たサッシャが、手際よくテーブルに料理を並べて行く。
「あ、俺も少し食べていい?使用人の食事はまだだからさ、腹が減って仕方がないんだよ」
「いいよ。俺はこんなに食べられないし。腹が減っては戦は出来ぬ、って言うもんね」
「…カナデって、昼間もそうだけど、時々変なこと言うよね。まあ、面白いけど」
「え?あ…、これは元いた世界にある言葉っていうか…。ま、まあ、お腹が減ると力が出ないってことだよ!早く食べよ」
「俺、カナデともっと仲良くなりたい。その綺麗な黒髪もだけど、カナデ自身にすごく興味がある!」
「あ、ありがとう…。サッシャは明るいね。王子様ってもっと偉そうなのかと思ってた…」
バルテル王子を頭に思い浮かべて、苦笑いをする。同じ王子でも、サッシャはバルテル王子とは全然違う。
「俺の父王が自由な人なんだよ。子供の頃は臣下や街の子供達と遊んでたし、今も国外に放り出されるしね。でも、そんな自由で明るい父王を、俺は尊敬している」
「うん、そっか」
サッシャの裏表のない性格は大好きだ。俺も彼ともっと仲良くなりたいと思う。
2人で料理を平らげて、食器をカゴの中に戻す。
俺が赤い上着を羽織ると、サッシャがカゴの中から黒いマントを取り出した。
「その上着と黒髪が目立つから、これ羽織って」
渡されたマントを頭から被ると、サッシャもカツラを取って、同じように頭からマントを被った。
「カツラしてると動きにくいんだよね。俺の髪もこの国じゃ目立つしさ。俺たち注目されて困っちゃうよね!」
サッシャの言葉にプッと吹き出しながら、緊張していた気持ちと身体が軽くなって、早くアルファムに会いたいという強い気持ちが湧いてきた。
「じゃあそろそろ行こうか。今の時間は使用人以外は食事をしてる。見張りも手薄になってる筈だよ。さて…と」
サッシャが窓に手を当てると、カチャリと音がしてゆっくりと向こう側へ開いた。
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