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サッシャのあとについて進み、倉庫のような石造りの建物の前で足を止める。
大きな扉の前で、サッシャが「俺だ」と言うと、ギーッと音を立てて、重い扉が向こう側へゆっくりと開いた。
サッシャに続いて、俺も中に入る。
中は一つの広い空間になっていて、そこに5人程のフードを被った男と、2頭の大きな馬がいた。
「皆、悪いな。こっそりとここを抜け出す予定だったけど、そうもいかなくなった。すぐに追っ手が来るかもしれない。逃げることを最優先して、無理に抵抗して怪我をしないように気をつけて」
「「はいっ」」
フードを下ろして顔を出し、皆に指示をするサッシャの姿は、上に立つ者のオーラがある。
俺も力強く頷いていたら、サッシャが俺のフードも取って皆を見回した。
「見ろ。この尊い黒髪を。彼は神の子かもしれない。くれぐれも失礼のないように接し、悪い奴から守るように」
「「はい」」
皆が俺をキラキラとした目で見て、大きく返事をする。
ーー絶対に神の子って信じたぞ?後で訂正しなきゃ…。あ、でも、もしかして、俺に反発を持たないようにそう言ってくれたのかもしれない。
俺は、皆に申し訳ない気持ちになりながら頭を下げて、先に乗ったサッシャに手伝ってもらって、銀色の毛並みが美しい馬の背に飛び乗った。
もう1頭の栗毛の馬にミケが乗る。
後の人達はどうするのだろうと思っていると、俺の疑問に気づいたミケが答えてくれた。
「他の者達の馬は、街の外れに繋いでいます。ここからそんなに遠くはありませんから、大丈夫です。サッシャ様とあなたは、追っ手が迫って来たら一気に翔んで月の国を抜けて下さい」
「わかりました。皆さん、どうか気をつけて」
「じゃあ行くよ」
サッシャが、再びフードを被ってゆっくりと馬を進める。
建物を出て、人通りのない暗い道を静かに進んで行く。
俺がいなくなったことにまだ気づいてないのか、追っ手が来ることもなく無事に街の外まで来た。
人数分の馬を見張って待機していた数人と合流して、ここから馬を走らせて炎の国との国境まで一気に駆け抜けるらしい。
「馬には充分な餌と水を与えている。休まずに炎の国へ駆け抜けるよ」
サッシャが皆に声をかけたその時、城がある方角の空が明るく光った。
「あっ!マズいっ!シルヴィオ王が、カナデがいなくなったことに気づいたんだよっ。皆、全速力で行くよ!」
「「はっ!!」」
全員が急いで馬に飛び乗り、ものすごい速さで駆け出した。
「カナデ!いざとなったら、空を翔んで俺達だけでも炎の国に行くから!心配しなくても大丈夫だ!」
「サッシャ…」
俺の後ろに座るサッシャを少しだけ振り向いて見る。
サッシャには、今すごく助けてもらっている。
無事に炎の国に着いたら、サッシャの望むことを何でも聞いてあげようと心に決めて、力強く頷いた。
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