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俺は再び前を向き、両手を握りしめて目を凝らす。
ーーまだ、まだっ、炎の国に着かないのっ?
今捕まったらもう二度と逃げ出せない気がする!早くっ!アルっ!!
逸る気持ちを抑えて前方を睨んでいると、先を行くミケが速度を落として後ろに下がった。
何だろうと振り返る俺とサッシャに向かって、ミケが声を張り上げる。
「サッシャ様!そのまま進んで下さい!俺がシルヴィオ王の足を止めますっ!」
「えっ!ちょっ…と、待ってっ!」
「…頼んだよ、ミケ」
俺の声を無視して、サッシャはミケを残して更に速度を上げる。
首を回して後ろを見ると、ミケが馬の向きを変えて、シルヴィオ王を待ち構える姿が見えた。
「サッシャ!ミケは大丈夫なのっ?」
「ミケは強い。少しは時間を稼いでくれる。その間に炎の国に何とか近づければ…っ」
ミケが心配だけど、俺の為に止まってくれたのだからと、痛む胸に顔を歪めて前を見つめることしか出来ない。
後ろから剣を打ち合う音が聞こえ、光が灯ったり消えたりしている。
すごく後ろが気になるけど、大した魔法も使えない俺は、何の力にもならない。
ーーミケやその他の人達も、どうか無事で合流出来ますように…。
そう小さく口に出して祈る。
「カナデ、あと少しだよ」とサッシャが呟いたその時、「逃がさんぞ」と言う低い声が、すぐ傍から聞こえた。
「え?…あっ!」
真横にシルヴィオ王の姿を確認した瞬間、サッシャの愛馬ティモが横に飛んでシルヴィオ王と距離を取った。
数メートルの間を開けて、ティモとシルヴィオ王の愛馬ペッツが並行しながら飛翔する。
「おい、使用人の筈のおまえが、なぜカナデを連れて逃げる。おまえは誰だ?」
シルヴィオ王の静かな声に、サッシャがいつものように元気に答える。
「どうも。はじめまして。俺はサッシャと言う。日の国の王子だ」
「…なるほど。俺の城に入り込んで何をしていた?」
「勉強だよ。優れた王だと評判の、月の国の王様を見習いたいと思ってね」
「ふむ…。勝手に入ってきて、勝手に人のモノを盗んで出て行くのか。日の国はそんなに野蛮だったのか…」
「は?よく言うよ。野蛮なのはそっちだろ?カナデを炎の国から連れ去って、手込めにしようとしてたじゃないかっ。カナデはアルファム王の大切な人だ。カナデもアルファム王を大切に想ってる。想い合う2人を横から邪魔する奴が、俺は大っ嫌いなんだよっ!…それに俺は、カナデの炎の国に帰りたいって言う願いを聞いてあげてるだけだし。邪魔しないでくれる?」
あの明るいサッシャが怒ってる…と、俺はポカンと口を開けてサッシャを見た。
サッシャは、鋭い眼差しでシルヴィオ王を睨んでいた。
「日の国の王は、少々常識外れなことをされると前から思っていたが、なるほど…。息子も中々の常識外れだと見える。おまえ、俺を怒らせたことを後で後悔するがいい」
「うるさいっ!俺の方が怒ってるんだからなっ!」
「チッ……」
シルヴィオ王が小さく舌打ちをしたと同時に、こちらに向かって掌をかざした。
後ろから「ぐっ」と呻く声が聞こえて慌てて振り返ると、サッシャが、額から汗を流して唇を噛みしめていた。
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