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アルファムの腕が俺の腹に周り、しっかりと抱きしめる。
俺の頬に頬を寄せて、「終わったぞ」と呟いた。
「シルヴィオ王は…どうなったの?」
「大した怪我はしていない筈だ。自分ですぐに治せるだろう」
「でも…」
「ふっ、怪我が苦しいのもあるだろうが、我々王と名のつく者は、怪我くらいでは人前で情けない姿を見せたりしない。あれは、誰にも負けたことのなかった自信が砕かれて、落ち込んでいるのだろう」
それを聞いて、もう一度シルヴィオ王を見る。
確かに今までの自信のある姿からは想像出来ないくらいに、ひどく落ち込んでるように見える。
セリムもどこかを痛めているのか、腕を押さえて眉間に皺を寄せながら、こちらを睨んで叫んだ。
「あなた方、卑怯ではないかっ!こちらはシルヴィオ王一人に対してそちらは炎の国と水の国の王が二人!力も互角!こちらが不利になるのは当然だっ!」
「はっ!卑怯だとっ!?」
レオナルトが、あたりに響き渡る大きな声を上げた。
「卑怯はそちらの王であろう。炎の国の城で、不意打ちで俺や俺の部下、風の国の王子を襲って、アルファム王が皆にも大切だと公言していたカナデを連れ去った。奪われたものを取り返すのは当たり前だろう」
「…くっ、か、彼はっ、シルヴィオ王に相応しい。その尊い黒髪に麗しい見目、神が落とす場所を間違えたに違いないんだ…っ」
「はあっ?」
俺の頭上から大きな溜息が聞こえて、思わず上を向いた。
アルファムが、とても怖い顔でセリムを睨みつけている。
「おまえは馬鹿なのか?現実にカナデが落ちた場所は、炎の国なのだ。落ちてくるカナデを助けたのは俺だ。こいつは無茶なことをする奴でな、また落ちようとした所も再び助けた。そんな見ていないと何をするか分からぬカナデを、俺は愛したのだ。…俺は愛しい者にどう接していいか分からなくて、カナデに辛い思いをさせてしまったこともある。だが、俺の命よりも大事だと思う程、カナデを愛してる。俺はもう、カナデ無しでは生きてはいけない。そんな大切なカナデを奪われて、このくらいで済んだことを感謝して欲しいくらいだ」
「アル…」
俺は嬉しくて感動して、アルファムを見上げながら、逞しい胸に強くしがみついた。
アルファムも俺を抱きしめ返して、額にキスをする。
「おまえは目を離すとすぐにどこかへ行ってしまう。だから俺は決めた。もう片時も離さないと。たとえ俺の城の中でも、ずっと俺の傍にいろ。約束だぞ?」
「うん…ごめん。あの宴の席で、アルとローラントの姿を見ていたら、俺ってここにいてもいいのかな、って急に寂しくなったんだ。それで二人の姿を見てるのが辛くなって…部屋を出て…。でも、もう寂しいなんて思わない。だってアルが、ずっと傍にいていいって、はっきりと言ってくれたから…っ」
言ってるうちに涙が溢れて頬を流れ落ちる。
ーー俺ってバカだなぁ。こんなにもアルが想ってくれてるのに、なんで寂しいと感じたんだろ…。
そう思っていると、「カナデは馬鹿だな」と笑いながらアルファムが言った。
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