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俺は、アルファムの胸に顔を埋めて、大きく息を吸い込んだ。アルファムの匂いを感じるだけで、俺の中が幸せに満たされていく。
しばらくうっとりとしていたけど、勢いよく顔を上げて「サッシャは!?」と聞いた。
「日の国の王子は、下で休んでいるぞ。王子の配下らしき者達も無事だ。ほら、見えるだろう?」
アルファムが、俺の髪の毛を撫でながら下を指さす。そちらに目を向けると、サッシャやその部下達が、座り込んでいたり、馬の世話をしたりしていた。
そして、サッシャに掌を向けて治療らしきことをしている人物を見て、首を傾げる。
「え?あれって…リオ…だよね?なんで月の国の兵士の格好してるの?」
「リオは、おまえが連れ去られるところを見ていたらしい。傍にいた使用人に『カナデを追いかける』と告げて、後をつけたのだ。カナデの腕輪で位置はわかっていたが、リオのおかげで、月の国の城でカナデがどういう状態かもよくわかった。おまえ…熱を出していたのだろう?もう大丈夫なのか?」
俺の顔を覗き込んだアルファムの、不安に揺れる緑色の瞳を見る。
「大丈夫だよ。サッシャが『熱が下がってもしんどい振りして休んでおけ』って言ったから、充分休んで今はすごく元気。でも、そっか…。リオも追いかけて来てくれてたんだね…」
「中々カナデに近づけずに困っていたらしいぞ。リオがモタモタしているうちに、変な使用人がカナデを連れ出したと知って、慌てて後を追いかけながら連絡をしてきた。俺は連絡を受けて、国境で待機していたのだ」
「…そうだ。炎の国と水の国の王。おまえ達は、不法入国だ。捕らえて我が国の法で裁いてやる」
ずっと黙っていたシルヴィオ王が、静かな声を上げた。
まだ何かするのかと不安げにアルファムを見上げると、アルファムは、余裕の笑みを浮かべた。
「アル…?」
「大丈夫だカナデ。月の国の王よ、俺達は月の国の民ではない。この国の法には従わない。そんなことよりも、早く王城のある街へ戻った方が良いぞ」
「な…なぜだ?」
「山の国の王が『豊かな月の国が欲しい』と言っていたからな。今頃、襲ってきてるんじゃないのか?」
「は?そんな嘘には…「王!」」
王城の方から飛翔する馬に乗った兵士が、ものすごい勢いで翔んで来た。
シルヴィオ王の隣に停止すると、左手の甲に右手を乗せて頭を下げる。
「どうした?」
「はっ!山の国との国境近くにある城が、マウン国の襲撃を受けているとの連絡が入りました。どうか早くお戻りくださいっ」
「なんだとっ!くそっ!あの野蛮な民族めが!セリム、すぐに城に戻る。炎の国と水の国の王よ、この礼は必ず返してやる。カナデも諦めたわけではないぞっ」
そう叫ぶと、シルヴィオ王は、両脇をセリムと兵士に守られるようにして、フラフラとする馬を叱咤しながら去って行った。
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