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「今度は何を笑っているんだ?」
俺は自然と笑っていたらしい。
アルファムが、訝しげに俺を覗き込んで頬を撫でた。
「うん…、今、俺は最高に幸せだなぁと思って…」
「呆れたやつだな。おまえ、毒を飲まされて苦しんでたのにか?」
「あ…。ま、まあそうだけど。でも俺は、アルの傍にいるだけですごく幸せなんだよ」
「カナ…」
アルファムが俺の顎をすくい、ペロリと唇を舐める。
「甘いな…。カナ、まだ食べるか?」
「うん。これ、すごく美味しい」
「そうか」
アルファムがもう一切れをフォークに刺すと、また一口食べてから俺の口に入れる。
俺は甘い果実を咀嚼しながら、アルファムの緑色の目をジーッと見つめた。
俺の視線を受けて、アルファムの目が細められる。
「なんだ?そんなに見つめられると照れるではないか」
「え?アルでも照れることがあるの?」
「おまえ限定だ」
「え?あ、そう…なんだ…。い、いや、その果物だけど、最初に毒味したんだから一切れ毎に齧らなくても大丈夫じゃないかなぁと思って」
「用心するにこしたことはない。それに、俺が心配だからやっていることだ。カナは何も気にするな。俺の手からは、安心して食べてくれ」
そう言って、また一口食べた果実を俺の口に入れる。
同じことを繰り返して、お皿に乗っていた分を全部食べた。
両手を合わせて「ご馳走様でした」という俺を真似て、アルファムも手を合わせる。
そして、首を傾げて手と俺を交互に見た。
「前から気になっていたが、カナは、食事の前と後に必ずこうする。なぜだ?」
「あ…うん。えっと、この果物や野菜は作ってくれる人がいるだろ?その人達に感謝してるんだよ。あと肉とかも命をもらってるだろ?その命にも感謝してる。それに料理を作ってくれた人達にも。だから、出された物は、いつも残さずに全部食べたいんだけど…。量が多いから困る…」
「なるほど。そういう意味があるのだな。ふむ…、中々よい習慣だ。俺もこれからそうしよう。それと、料理の量も減らそう」
アルファムがそう言って、手を合わせたまま笑う。
俺は驚いて、「いいの?」と聞いた。
「ああ。俺は何も思わずに出された物を好きなだけ食べていた。いつも大量に作らせては残して。でも、そうだな。カナは、残すのも悪いと思ってるのだろう?だから今夜からは、少なめに作るように言っておく。食べきれる量でいいと。しかしカナは、もう少し食べた方がよくないか?少食過ぎやしないか?」
「俺は食べる方だと思うよ。ほら、アルやシアンやリオとか、レオナルトにしても、皆身体が大きいじゃん。俺は、この世界では小さい…方…だし…。さすがに皆みたいには食べれないよ」
果物を食べる為に背中にクッションを当てて座っていた俺を、アルファムが優しく包む。
「おまえは華奢だからな。本当にいつか消えてしまわないかと心配になる…」
頭の上で囁かれるアルファムの声が、少し震えている気がして、俺はアルファムの胸に顔を強く押し付けた。
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