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廊下に取りつけられた灯が、牢の中を薄く浮かび上がらせる。
狭い牢の中のちょうど真ん中辺りに、犯人がペタリと座り込んでいた。
「顔を上げろ」
アルファムの静かな声に、犯人がゆっくりと顔を上げた。
「あ!あなたは…っ」
虚ろな目をした顔を見て、俺は思わず叫んでしまう。
犯人だというその人は、俺の身の回りの世話をしてくれていた使用人の女の人だった。
「え…なんで…」
いつもニコニコとして穏やかで、俺が頼み事をするとすぐに聞いてくれて、よく気が利く優しい人。
でもそれは上辺だけで、本当は俺を殺したいと思っていたのか…。
心臓が早鐘を打ち、カタカタと手が震え出す。その手を、アルファムがしっかりと握ってくれた。
人に憎まれるということは、とても辛くて怖い。だからと言って、逃げてはダメだ。
なぜ憎いのか、理由をちゃんと聞かなければ。
「…おまえは、確かカナの世話をしていたな。カナを殺そうとした理由は何だ?おまえの独断か?それとも誰かの命令か?正直に言え」
「…わ、わたし、は…」
アルファムの静かだけど拒否することを許さない厳しい声に、女の人が震えながら話し出す。
しっかりと聞こうとアルファムの隣に並んだ俺と目が合うと、女の人が大きく目を見開いて涙を流した。
「あ…あっ…、カナデ様っ、ごめんなさい…ごめんなさい…っ。あなたは何も悪くないのに…、優しいあなたに酷いことをしてしまったっ!」
大きな声を出しながら、女の人が膝でズリズリと近寄って来て鉄格子を両手で掴んだ。
そして、俺を見上げながら何度も謝った。
俺は、やっぱりこの人は優しい人だと、何かどうしようもない理由があったんだと、屈んで女の人の手に触れようとした。
だけど、即座にその手を掴まれて、アルファムに背中から抱きとめられてしまう。
「カナ!迂闊に近寄るな!こいつは、おまえを殺そうとした奴だぞ!」
アルファムの厳しい声に、俺はビクン!と肩を揺らした。目の前で泣き崩れる女の人が可哀想で、どうしても悪い人には思えなくて、「でも…」と呟く。
「この人、俺にとても優しかったよ。丁寧に身の回りのことをしてくれてたし…。きっと、どうしようもない理由があったんだよ。ねぇ、あなたは何で俺を殺そうとしたの?誰かに言われた?大丈夫だよ。ちゃんと話してくれたらここから出してあげるから…」
「カナ!」
アルファムの低い声が、地下牢に響き渡る。恐る恐る振り仰いで見た顔は、とても冷たく怖かった。
「…なに…」
「カナ。おまえは優しすぎるのだ。こいつが誰かの命令で仕方なくやったことだとしても、実際に毒を入れたのはこいつだ。許すわけがないだろうが。それなりの罰を与える。…おいおまえ、早く白状しろ。誰かの指図を受けたのか?誰だ、そいつは?」
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