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* Scent.2 *
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「あ……」
一目で分かった。アルファだ。
どこからともなく漂ってくるフェロモンに、ひく、と鼻を鳴らす。
立花はごく少量のフェロモンでも過敏に反応してしまう体質だ。
控えめではあるものの、脳が痺れるほど強いその匂いに、脈と呼吸が乱される。
身体からはとうに薬は抜けきっているはずなのに、アルファに目をつけられるなんて運が悪い。
「……何が、目的ですか」
開口一番、低く愛想のない声を発した。
自分が今、どんな顔でどんな匂いを振り撒いているのか、知るよしもない。
周りは大方見てみぬ振りか、オメガの立花に嫌悪の目を向ける者もいる。
「……そうだな。君を助けたいと思っているし、その後は名前を知りたい」
軽く逡巡してから答える。
思ってもみない返答に、立花は不思議そうに今自分を抱いている男を見上げた。
──どうせ、やりたいだけのくせに。オメガに構うやつなんて、大抵がそうだ。
皆最初は優しくしてくれて、立花が心を開くと無理矢理に抱こうとする。
発情期のせいだ、オメガが誘ったんだ。そう言えば許されると思っているし、実際にそうだった。
「……倒れたりして、すみませんでした。寝不足で電車に乗って、気分を悪くしただけです」
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