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* Scent.2 *
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涼風さん、と呼ばれた男の目が再び立花のほうを向く。
出会い方は立花にとって最悪で、出来ればあれっきりでもう思い出したくはなかったのに。
「朝は真っ青だったけど、今は元気そうだね。よかった」
短い言葉でも、気遣ってくれていることがよく分かる。
「どうもありがとうございました」と、立花はなるべく感情を込めて言葉を返した。
「え、立花さん。今日何かあったんですか?」
「今朝、大学までの行き道が一緒だったんだよ。あまりにも綺麗だったから。俺から声をかけてね」
二葉の問いかけに答えづらそうにしていた立花に気付いて、代わりに涼風が冗談めかして答えた。
声をかけられたことくらいしか整合していなくて、立花はむっと唇を曲げた。
「……今朝は、どうもありがとうございました。よかったら好きなものを頼んでください。会計は僕が持ちますので」
「気持ちは嬉しいけど、代金は自分で支払うよ」
銀色のトレーにコーヒー一杯分の代金がきっちり釣り銭なく置かれる。
すぐに財布をしまったので、突き返す隙もなかった。
あらかじめ機械を使って挽いていたコーヒー豆を、レシピに書かれている通りにドリップする。
湯気の立った熱い液体をカップに注ぎ入れて蓋をすると、それをカウンターの上へ置いた。
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