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* Scent.2 *
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立花や二葉とは対照的に甘いものが好みじゃないと決めつけていたが、涼風はレジ横に置かれている小さなバスケットの中をしきりに見つめている。
透明な袋でラッピング包装されたカップケーキに興味津々な様子だ。
余らせた材料でたまに立花がつくっているお菓子だ。
それほど日持ちはしないし、客層のほとんどが飲み物だけを注文するので、売れ行きは正直言ってよくない。
翌日には廃棄になって、誰かが持ち帰ることになる。
「甘いもの、好きなんですか?」
「ああ、うん。一息つきたいときに食べるよ」
そうなんですね、と返したっきりで会話は終わってしまう。
もっと上手くつなげられたらいいのに。
「どんなものを食べるんですか?」とか、微妙な間が空いてしまった後ではいっそう聞き辛くなる。
受け身での会話のキャッチボールはあんなに楽で簡単だったのに、背伸びをすると途端に続かなくなった。
「これ、もしかして立花君がつくったの?」
「そうです……けど、試作品って感じで」
不器用なセールストークを交えながら、立花は自分のつくったカップケーキに視線をやった。
タイムやレモンバーム、林檎の果実を入れて焼き上げたものだ。
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