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* Scent.2 *
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二葉やパートの女性達は美味しいと言ってくれて評価も上々だが、一同僚だという色眼鏡を通した感想なのは分かっていた。
「手先が器用なんだね。じゃあ、1つもらおうかな」
「え、本当に買うんですか」
聞き返すときに思わず本音が出てしまった。
いつものコーヒーの代金にカップケーキの分を上乗せしたお金を、涼風は支払った。
売れ残っているのを見かねて買ってくれたのかもしれない──それでも、嬉しかった。
「えっと、よかったら、また次回でいいので。食べた感想とか……聞かせてください。いろいろと勉強したいので」
また来てください、なんて厚かましく思われたらどうしよう。
昔から自分が何か言うと、父母には怒鳴られてばかりだったし、学校では誰もオメガの立花に関わりたくないのか、無視されることがほとんどだった。
失言してしまうのが怖いあまりに、立花は無口になっていったのだ。
それなのに今は、涼風と言葉を交わすのが毎日楽しくて仕方がない。
「また来るよ。お仕事頑張ってね」
「はい。涼風さんも……頑張ってください」
構内ですれ違う学生達よりも涼風は大人びた雰囲気を持っている。
ここの学生なのか、立花のように働いているのか、どちらなのだろうか。
名前を知ったら、他のことももっと知りたいと思うようになった。
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