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* Scent.3 *
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「私ごときが親代わりなど差し出がましいかもしれないが。息子と同い年の君を放っておけなくてね」
初めて耳にする言葉の意味がよく分からなくて、立花はそのまま頷いてよいものか迷った。
ぽつんとケーキの入った箱を持ったまま立ち尽くす立花を、暖房の入った広いリビングへ呼んだ。
「きれい……」
溜め息とともにそんな台詞が頭の上から降ってきて、立花はきょろきょろと顔を動かしながらその声の主を探した。
立花がいる部屋のさらに奥に、壁に囲われていない独立した構造の階段に、黒い髪の少年がいる。
目線が合いそうになると、その少年は手すりの影に隠れてしまった。
──もしかして、僕と同い年って言っていた……。
「唯人[ユイト]。まだ起きていたのか」
「だ、だって、今日はお休みしていたから……全然、眠れない」
けほ、と乾いた咳をしながら、いつまでも姿を見せない少年が反論する。
「部屋に戻るか下に降りてくるか、どちらかにしなさい」
「……隣にいるのはだれ?」
「……紹介してあげるから、こちらに来なさい」
言われてからようやく、おそるおそるこちらの様子を窺っていた少年が姿を現した。
薄い二重の線のついた黒い瞳が、立花を不思議そうに見つめている。
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