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* Scent.4 *
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レンズの奥の澄んだ瞳が立花の視線とぶつかると、たちまち不安げに揺れる。
確かにあの行為は立花の望んだものではなかった。
でも、そのことについて、涼風あるいは学校へ訴えたりしないし、誰かに広めたりはしないと決めていた。
たとえ、涼風に覚えていないとしらを切られたり、逆上されたりしても。
「うわあ、郁ちゃん。こんなお昼間から美人をナンパしてる!」
「……真下はいつも元気だね。素敵な取り柄だと思うよ。元気ついでにこれを片しておくように」
涼風は付箋がびっしりとついた書類を真下へ預けると、立花を院生室へ招いた。
きゃっきゃっと今までからかっていた彼女の顔が青ざめていき、「はぁい……」と萎んだ声を残して去っていった。
暖房が入れられている暖かい部屋の出入り口で、立花は突っ立っていた。
あの一件の直後で、2人きりになるなんて少し不用心だったかもしれない。
マグカップにインスタントコーヒーと熱湯を注いでいる涼風の背中を見て、立花は後悔していた。
「立花君、あれから仕事に出ていないって聞いたから。会って話をしたかったんだけど、なかなか会えなくて」
「……別に、涼風さんを避けていた訳じゃないです。慣れてるので。こういうこと。オメガなら珍しいことでも何でもないです」
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