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* Scent.4 *
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探るような視線を向けられても、立花自身を見てくれているので、真下には少し好感が持てた。
「立花君ってここの学生なの?」
「えと、違うんです。食堂横のカフェでアルバイトしてます。すみません、学生以外は立ち入り禁止ですよね。ここ」
「別にいいんじゃない。身分証提げてたら誰も気にしないし」
立花が気にしていたことを、真下はあっさりと肯定する。
涼風も特に口を挟まなかったので、ほっと胸を撫で下ろした。
ドライフルーツとナッツを混ぜたクッキーを、涼風が口にしてくれたのを見て、こんがらがっていた心が自然と凪いでいく。
誠実な人なんだろうな、と思う。
それならどうして瑛智には本当のことを言わなかったのだろう。
──僕のフェロモンに巻き込まれた、ってことにしたかったのかな。
立花を抱いた責任は取りたくないのだろうか。
それで、立花が騒いだら仕方なく、という算段だったのかもしれない。
優しい振りの、その裏を疑ってしまう。
不意にソファから微弱な振動が伝わってきて、立花は背筋を伸ばす。
真下のスマートフォンに通知が入ったらしい。
画面を確認した真下は、大袈裟に溜め息をついた後に唇を尖らせた。不満を発散する先は涼風だ。
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