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* Scent.4 *
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二葉を心底気がかりに思う内田と三谷が、優しげな声で問いかけている。
あれほど慕ってくれていた二葉も、きっと立花のいないところで手のひらを返して嘲笑うのだろう。
許容し切れない現実に、思いがけなく吐き気がこみ上げてきて、余計な嗚咽を漏らさないように両手で口を塞いだ。
「そうですね……」
ずるずると背を壁に引き摺り、立てた膝の先に頭を押しつける。
これから酷く罵られるのだと分かっていながら、立花は二葉の次の言葉を待った。
「立花さんにはすごくよくしてもらっています。ちょっと不器用ですけど、優しい人です」
もういっそのこと、一緒になって貶して欲しかった。
見下げていた二葉に庇ってもらう資格なんてない。
そうされるほうがよほど自分が惨めに映るのだ。
「私達、勝手に包海さんに言ったりしないから大丈夫よ。もし真白君が言いにくいようなことがあったら、それとなく言ってあげるし……」
「いえ、結構です。立花さんに不満なんて1つもないので。僕からは何も言うことはないです」
淡々とした口調できっぱりと言い切ると、二葉は打刻機の音を鳴らした。
天真爛漫な姿をがらりと変えた二葉に、押し黙る2人はまだぶつぶつと何かを言っているようだが、扉越しの立花の耳には届かなかった。
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