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* Scent.4 *
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福井と涼風は高校生以来の友人で、それぞれ違う大学、学部へ進学している。
別々の進路へ進んでからは頻繁に連絡を取ることはしていなかったらしいが、涼風が自身の研究テーマにゲノム医療を選んだのをきっかけに再び交流するようになった。
世界的に患者数の少ない希少疾患は、まだまだ研究も臨床試験の手も伸びていない。
「今日取り立てのデータ。俺のほうではまだ精査出来てないけど。詳しいのは後日メールで送るって」
「ありがとう。いつも助かるよ」
厚みのある茶封筒を受け取ると、涼風は即座に中身を確認する。
細かい英数字の入り交じったものと、何を表しているのか全くもって理解不能なグラフを、立花も横から見てみるけれど、さっぱり分からない。
対して涼風はうんうんと唸ったりしていて、難しそうな顔をしては時折嬉しそうな表情をする。
「ピークは上手く別れてる。単離は出来ているけれど……後は手間と回収率の問題かな」
ふう、と浅い溜め息を吐いて、スマートフォンのカメラを起動させいくつか写真を撮っていく。
一段落ついたというところだろうか。
よかったですね、と声に出そうとして、やめてしまった。
何も知らない立花に言われても響かないだろうし、見当違いなことだったら雰囲気を悪くさせてしまう。
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