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* Scent.4 *
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断面のくし形になっているところを、指が行ったり来たりしている。
聞き慣れない表現と字面も思い浮かばないような単語に、次第に置いていかれて立花の表情は固まりつつある。
鼻を高くして語る涼風は、立花のリアクションが薄くなったことに気付いていないらしい。
「郁ちゃんここでも研究の話? ……立花君引いてるよ」
「すみません……あんまりお話についていけなくて。また今度、ゆっくり聞きたいです」
「謝らなくていいぞ。それが正常な反応だからな」
真下と福井の2人が、退屈で目を閉じそうになっていた立花を見かねて助け船を出してくれる。
しばらくは他愛ない会話に立花も参加することが出来たが、久しぶりの旧友との再会で、話は徐々に研究の方面へとシフトしていく。
涼風達が目標としているのは、希少疾患の患者の体細胞に、クローニングした遺伝子を挿入する遺伝子治療だ。
ベクターや制限酵素、クローニング法については論文を何本か書けるくらいには有用なものを見つけられてはいるが、動物実験での成果は芳しくない。
「細胞への感染だと失活して、宿主細胞での合成が上手くいかないときがある。思いきって遺伝子導入のターゲットをミトコンドリアに変えてみたら、案外いけそうな気がして……」
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