アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
* Scent.4 *
-
「いえ……僕が知識不足なだけですから」
「私も同じ学部だけど、何話してるかほとんど分かんないよ」
目線を依然向かい合っている2人に向けると、盛大に笑い飛ばす。
落ち込んでいる立花を励まそうとしている気は多分ないのだろうけれど、少し楽になった。
──きっと涼風さんの隣に相応しいのは、何も理解出来ない自分よりも、優秀なアルファなんだ……。
立花が不幸な境遇に嘆いているだけの時間に、涼風は誰もが幸せになれる世界をつくろうとしている。
くしゃくしゃに丸めて翌日にはゴミに出した、夢物語だと自分自身で嘲笑った世界を。
アルファだってオメガだって、与えられた時間は平等だ。
その公平さに今は打ちのめされている。
嫉妬じゃない。涼風の仕事は誇らしいと思う。
でも、希望を持つと共に、聞くんじゃなかった、と相反する気持ちも生まれてきて……。
涼風達のつくテーブルに飲みかけのグラスを忘れてきてしまったことを思い出したが、今さら取りに行ける雰囲気でもない。
立花は店員を呼んで、新しいものを頼んだ。
……────。
──ん……なんか、ふわふわしてる……。
時間の間隔があやふやだ。スマートフォン、どこにあったっけ?
大事なものが手元にないのに、それほど危機感もやってこないし、それを異常だとも感じない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
108 / 263