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* Scent.5 *
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「立花。立花だね?」
声も呼び方も、二葉や涼風の発したものではない。
指先が急に冷えて感覚をなくしていく。
すぐに地面を蹴って逃げ出せば……思考がよぎったけれど、客の機嫌を損ねれば瑛智にもそれが後に伝わる。
立花は諦めて、名前を呼んだ男の元へ行く。
「……こんにちは」
「久しいね。包海氏からなかなか誘いの連絡がなくてね。私に会えなくて寂しかっただろう? 立花」
感覚の失った手足が甦り、不快なものに這い寄られている気分だ。
瑛智が懇意にしている仁居の前で、立花はアルファに媚を売るようなオメガを演じられなかった。
そもそも客の要望には柔軟に対応出来るタイプじゃない。
シチュエーションに応えられない代わりに、複数でやや乱暴に扱われることが許可されているのだ。
「すみません。あなたと個人的にお話することはありません。僕と……したかったら、あの人を通してください」
「確かに今は君のプライベートだ。だが、いつまでその態度を取るつもりだ? お義父様の躾がどうも足りないらしい」
瑛智の名前が出た途端に強張る身体を、仁居は強引に引き寄せた。
周りから不自然に見えないような触れ方で、仁居は立花の細い背と腰を数度なぞった。
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