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* Scent.5 *
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仁居の溢す愚痴は、オメガの立花への当て擦りのつもりなのだろうか。
「ところが最近、興味深い話を聞いてね。投薬や外科治療を使わずに、遺伝子治療で抑制剤の感受性や、フェロモン異常を生涯にわたってコントロール出来るのだとか。……私は切るしか能がないが、若い彼らには研究の才能があるようだ」
遺伝子治療、そして彼らとは、誰のことを指しているのか、分かってしまった。
冷静さを保てなくて、立花は唇を噛んで俯く。
「彼らの夢は潰すのには惜しい。私としても、応援したい気持ちでいっぱいなのだが……心苦しいね」
「僕が……。僕が、番にならないと、お金を出さないということでしょうか」
「そうは言っていないだろう? 彼らの技術を称賛している。待ち望んでいる患者もたくさんいるだろうね。ただ……可愛がっていたオメガを横取りするような人間には、信頼は置けないという話だ」
──どうして、涼風さんのことを……。
心の揺れと表情を汲み取られて、全てが仁居の思うままだった。
出資の話と立花が仁居の番になるという話をあえて遠ざけているのは、脅迫だと取られて不利にならないようにしているためだろう。
仁居の言わんとしていることは、十分に理解した。
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