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* Scent.5 *
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院生室のドアプレートの「会議中」という文字の横に、マグネットが置かれていて、迷っていたところだった。
「久しぶり。なかなかお店に顔出せなくてごめんね」
「あっ……いえ。全然。涼風さん、忙しいし」
生徒達のロッカーと白衣がぶら下がっている部屋の隅のデスクに、立花は案内された。
この部屋は実験室とも繋がっていて、休憩室のように使われている。
デスクにちらっと目をやると、ところどころに英数字や注釈、グラフの入った書類が置かれていた。
涼風は紙の束をとんとんと地に打ちつけて纏めると、隅に追いやってしまった。
「ごめんなさい。やっぱり忙しかったですよね」
「ううん。休んでた間に溜まっていた仕事。もう終盤だからすぐに終わるよ」
学生の卒論を提出する前に、院生が書体や考察などをチェックして出来るだけ不備がないように精査するのが仕事なのだと言う。
回転椅子を用意してくれて、立花はそこへ座る。
「それ。どうしたんですか? ……怪我」
涼風の左手に巻かれた包帯とギプスを見て、顔をしかめる。
見覚えのあるようなないような場所だった。
「ああ、これ? あの後ちょっと痛み出して病院に行ったら、ひびが入ってますね、って言われて。びっくりした」
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