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* Scent.5 *
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「本当に、何でもないんです。心配をかけてごめんなさい」
「立花君にとって、俺は頼りない? ……ごめん。意地悪な質問だった」
涼風に踏み込まれて、立花の表情がさっと曇った。
──僕は……あなたの夢を応援したい。一緒にいることが邪魔になるというのなら。
自分がいなくなったって、涼風の夢はきっと叶う。立花と出会う前に戻るだけ。
答えはもうすでに弾き出されているのに、踏ん切りのつかない自分がいる。
恋をする感情なんて、ずっと知らないままのほうがよかった。
こんな感情さえなければ、浅い傷で済んだし、後ろ髪を引かれることもなかったのに。
「僕は大丈夫です。だから涼風さんは、ちゃんと自分の夢を叶えてください。僕のせいで、叶わなくなったら……嫌です」
「……怒られたな。立花君のせいにする訳じゃないよ。でも俺の支えになってる」
あっ、と涼風が何かを思い出して呟く。何だろうか、と立花は首を傾げて言葉を待った。
「お礼を言うのが遅れてしまったけれど、お菓子、ありがとうね。すごく美味しかったよ」
デスクライトの細い柱に、見覚えのある赤いリボンが結んであった。
立花の働き先でつくっている洋菓子のラッピングに使っているものだ。
取っててくれたんだ。涼風の気持ちに、胸がぽかぽかする。
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