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* Scent.5 *
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涼風のくれる言葉1つ1つが優しくて心地よくて、それが自分だけのために言ってくれたのだと思うと、視界が潤むくらいに大きな幸せを感じる。
だからきっと頑張れる。
望んだ相手と番になれないオメガは、立花だけじゃない。
その逆の幸運なオメガを妬んでも、立場は変わる訳ではないから無意味で。
──涼風さんの隣にいる人は、アルファかベータがいい。
同族嫌悪というやつなのだろうか。
涼風が番をつくるのを想像すると、みっともなく取り乱してしまいそうになる。
立花が押し黙ると、代わりに涼風がそこはかとない話題を提供する。
どれにも立花の興味を引くものはなくて、涼風は困った顔をした。
涼風とずっと一緒にいたい。
お互いに触れている時間が幸せで、でも、言葉を交わすのは……温かさで溶けた膜から、思わぬことをぽろっと漏らしてしまいそうで、怖いのだ。
──僕が他の誰かのものになっても……僕は、涼風さんが大好きです。
心の中で呟いた声と、これから立花が遠くへ行ってしまうことは、涼風には届かなかった。
× × ×
立花はそれからアルバイトの時間以外は、涼風に会おうとはしなかった。
メッセージも一方的に送られたものが溜まるばかりで、極力返信はしない。
翌朝まで開くのを待って、「気付かなかった」なんて白々しく言う。
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