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* Scent.5 *
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瑛智の肩を掴んでいる自身の指の先が、感覚をなくしてどろどろの飴みたいに流れていく。
背景の天井との距離感も分からなくなってきて、立花は微かに喘ぎながらじたばたともがいた。
1度背をつかせたソファから、自分の意思で起き上がることは叶わなかった。
フェロモンに似せた香水で、オメガの本能が駆り立てられている。
アルファに服従し、体内に精を受けるまで疼く身体と果てのない欲は治まらない。
いまだ逃げ場のない熱が、全身を駆け巡って立花を苦しめている。
視界の端では、瑛智がバイアルから液体を吸い上げて透明な筒を満たしている。
薬液の入った筒を指で弾き、気泡を先端へと集めると、針の先からそれを飛ばした。
「う……あっ、あ、あぁ……」
飛び散ったものをかき集めても1滴にも満たない、その液体を身体に受けただけで、内側に燻っている熱が暴走する。
前を擦り上げたい……後ろをぐちゃぐちゃに犯されたい。もう何も、考えられないくらいに……。
「嗅覚に作用するだけで、狂い出しそうになるだろう? 肌にかかるともっとだ。これを、直接中に入れるとどうなるのか、私も想像つかないね」
指の腹が腕の屈伸部の、青く太い静脈を撫でている。
アルコールを含ませた脱脂綿が肌を滑り、一瞬熱が飛ぶ。
押さえつけられてもいないのに、筋肉が弛緩してしまったようで動かない。
狙いをつけた場所に銀色の針が沈んでいく様子から、ただ目を離せないでいた。
注射筒の薬液に自分の血が逆流している。それも含めて、中の液体が徐々に血管へと入っていく。
黒い巨大な絶望が、怯えてすっかり動けなくなった立花を容赦なく捕らえて、底に引き摺り落とした。
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