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* Scent.6 *
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もしかしたら、自分は飢えるまで一生このままではないのか。
そんな恐怖が脳裏をよぎったが、それまで意識が持つのかどうかも怪しい。
──ああ、これはきっと罰なのだ。
こんなにも汚いのに、1人では何も出来ないのに、身の程知らずな恋をしてしまった。
だって、話しかけられただけで、触れられただけで、自分は涼風にとっての特別なんだと思い上がってしまったから。
とっくに時間の感覚は頭の中から抜けてしまっている。
縛られたままの、同じ体勢で這いつくばっているから、固い鉄の床にぶつかっている骨が痛い。
痛みを通り越して今度は、熱い……熱い。空っぽの体内を埋めてくれる、他人の熱が欲しくて堪らない。
意識していないと、呼吸すらまともに出来なくて苦しい。
時々、苦悶から解き放たれて楽になることがあるが、気を失うようにして眠ってしまっているだけで、覚醒すれば徐々に感覚が甦ってくる。
大量にかいた汗のせいで、喉も渇いてひりつくように痛む。
もちろん食事など用意されないから、浅い皿に注がれた水を飲んで命を繋ぐしかない。
手枷を嵌められたままで、頭を垂れてそれを口にする。
尊厳すら放り出して必死に生きようとしているこの身体が、酷く惨めで嫌だった。
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