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* Scent.6 *
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──もっと……大切なもの。
どっどと熱いものが、全身を巡らせる血液にのって行き渡る。
部屋の温度よりも冷たく凍えていた手足が、温度を取り戻していく。
──そう言ってもらえたら嬉しい……けど。
『涼風達の研究に出資の話がきている』──技術の実現1歩手前まで辿り着いていたのに、それを台無しにしてしまった。
もし立花が家族の愛など求めずに、包海の養子になることを断っていたら、仁居と関わっていた事実も存在しなかったし、瑛智のために身体を売る必要もなかった。
──僕は……出会うずっと前から、涼風さんの夢を壊していた……。
仁居や瑛智の不正に、知っていながら加担していた。
自身も罪に問われるべき存在なのだ。
涼風にとって今1番大切なのは、ここまで研究を続けてきた仲間達だ。
テーブルの上に置かれた涼風の左手には、まだ包帯が巻かれている。
離れていても一緒にいても、彼の邪魔しか出来ない。
そんな自分が涼風を好きだなんて、涼風も好きになってくれるのだろうって。
犯してきた罪を棚に上げて、何を根拠に思い上がっていたのだろう。
「もうこんなところにいなくていい。だから……俺と一緒に来て欲しい」
「何、で……僕は」
「立花君が我慢してきた辛いこと、俺にはきっと計り知れない。でも、2度とそんな思いをさせないように……俺が、守るから」
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