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* Scent.6 *
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鋭利な刃先は、涼風のほうではなくて立花のほうへ向けられている。
ここから逃がさずに仕留めて、立花が証人として情報を売らないようにするつもりだろうか。
「どうしてずっとお腹の中を隠してるの。本当はそこにいるんだよね……俺達の子が。立花が見せてくれないなら、俺がお腹を裂いて確認してあげる」
「そんな、ことしたら……死ぬ。唯人は、僕を殺したいの……?」
「ううん。好きと殺したいは違うから」
数秒あればすぐに縮まる距離。
床を蹴って走り出す唯人を視界では捉えていたものの、十分な距離を取る猶予はなかった。
握られたペティナイフの先が、皮膚を突き破って腹に沈んでいく走馬灯が脳裏で流れる。
やってくる感覚がやけに遅いと感じて、立花は恐る恐る目を開いた。
ナイフはすでに唯人の手から離れていて、涼風が枝のように細い腕を掴んでいた。
竦み上がった両足は体重を支えられなくて、立花は恐怖でその場でへたりこんでしまった。
涼風がいなかったら、あのナイフは今頃自分の腹へ埋まっていた。
「唯人、ごめん……僕は包海の家に来るべきじゃなかった」
オメガの立花がいなければ、包海家はかろうじて家族の形を保っていたのかもしれない。
瑛智や唯人が犯した行為は到底許せるものでもないし、立花は数え切れないくらい彼らを恨んだ。
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