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* Scent.7 *
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「その……実は、涼風さんとお付き合いを始めまして」
立花の告白を上塗りするように、休憩室は祝福の声でいっぱいになった。
早くくっつかないかとやきもきして見ていた周りは、「おめでとう!」と口々に言う。
帰るところのなくなった立花は、そのまま涼風の借りているアパートに居ついていた。
今年の春には修士課程を終えて、涼風は予定通りに福井達とバイオ関係の事業を興すのだという。
卒業後には今よりももっと広い部屋に引っ越そうと、涼風に誘われた。
そうなると必然的に、職場へ毎日通うのは難しくなる。
今のカフェでの仕事は気に入っているが、もちろん涼風に着いていくことを選んだ。
「ねえねえ、どっちから告白したのっ?」
「絶対に眼鏡の彼だわ……! 毎日ここに通ってたんだから。包海さんが来てないとき、すごくしゅんとしてたのよ。そういうところもギャップで可愛かった」
馴れ初めを根掘り葉掘り聞かれたが、立花はどれもまともに答えられず沈黙してしまった。
きっと涼風にも同じ質問をするのだろうと予感する。
──でも涼風さん。忙しそうだったし、あまり来られなくなるかも。
そう言ったらがっかりさせそうだ。
引っ越しの手配や荷造り、涼風が主軸になって進めている事業の立ち上げ、さらに修士論文の提出課題もあり、家では会話をする隙もないくらいに忙しそうにしている。
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