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8-5.クリスマス・イブ
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大学は冬休みに入り、今日、蓮夏とクリスマス・イブを迎えました。
「どう?気に入ったかな」
机の上にホールサイズの可愛いクリスマスケーキを用意する蓮夏。相変わらず両親不在だけど、蓮夏と2人で過ごせてほんとにすごく嬉しい。幸せだなぁ…。
「わぁぁ…すごい、サンタ2人と、これなんだろう?」
目を輝かせてケーキを見ると、蓮夏がふわりと微笑む。
「切ってあげるよ。座って」
蓮夏に促され、僕は椅子に座る。
「2人じゃ食べきれないね。」
「そうだね。明日また食べようか」
「蓮夏、ここにクリーム付いてるよ?」
「え?」
「嘘〜〜蓮夏でも騙されるんだ」
ケーキを食べ終わると、席を立とうとする僕を蓮夏が止めた。
「ちょっとまってて」
僕の前から1度姿を消す蓮夏。…あ、プレゼント持ってきてくれるのかな?あ!!てゆーか僕蓮夏にプレゼント何も用意してないっ!!すっかり忘れてた…。クリスマスかぁ…て呑気に考えてただけの僕って…。どうしようと悩んでいると、蓮夏が戻ってきた。
「まず、これ」
すると、大きな花束を手に僕に渡してくる蓮夏。白いお花がたくさん…。か、かわいいお花…。
僕は驚きすぎて一瞬言葉を失った。
「すごく綺麗…だけど、どうしてこんな花束…?」
クリスマスは特別な日だと認識してるけど、こんな大きな花束…初めてだ。困惑しながら見上げる僕を蓮夏は優しい顔をして見つめる。
「…告白かな」
へ……。
「ずっと考えてたんだ。…君が大きくなったらこの家を出て、2人で暮らしたいって。色々忙しくて、だけどやっと資金も貯まったから。」
蓮夏の話に目を大きくする。この家を出て…って、
「どういう、こと?」
蓮夏の手が僕の頬に触れる。蓮夏は言った。
「……俺と一緒に2人だけの家で暮らしてくれないか。死ぬまでずっと」
え…?
「……でも」
「お母さんたちのことは気にしなくていい。俺は、咲太がいればいいんだ。」
蓮夏が僕の顔を自分の方へと引き寄せる。僕はなぜか顔を逸らしてしまう。
「…まって、…まって蓮夏」
「……」
だって……。
「僕たち、兄弟なんだよ…。死ぬまで…って、それ言う相手は僕じゃないんじゃないの…?」
なぜか、すんなり受け入れることが出来ないのは…なぜなんだろう。
「…どうして」
「……だって、僕は蓮夏の弟なんだよ…?」
蓮夏が僕の顔を見据える。
「…だったら駄目?」
「え?」
スっと腰に手を回してくる蓮夏。
「…じゃあ咲太は、他の見ず知らずの人と俺がここを出て一緒に暮らしててもいいって言うの?」
それは……
「…嫌だよ。」
嫌に決まってる。
「じゃあ」
「でも、…分かんないよ。じゃあって…なに?突然過ぎるよ、…蓮夏。…蓮夏が何考えてるのか…分からないよ、僕…」
蓮夏の漆黒の瞳を見つめる。
そうだ、僕はいつだって、蓮夏の真意は分からない。優しい温もりに僕はいつも目を閉じて受け入れるだけ。でも…何かおかしい、僕達は、…兄弟なのに…。蓮夏にドキドキしてしまう自分をこんなに簡単に許してしまっていいのだろうか…。
なで、と頬を蓮夏に触られる感触にこんなにも簡単にときめいてしまう。甘く護られている、それが日常となってしまった空間。
「蓮夏は…いつも僕のことを振り回す…僕が聞いても答えてくれない時もあるし、蓮夏は…いつも僕のことを子ども扱いして」
僕は、…混乱してる。
「…俺が?いつ?俺は咲太を可愛がってきたけど、子ども扱いしたつもりは無いよ。」
何もかも嘘に聞こえる。僕は、蓮夏に言えなかったことを口にする。
「嘘だよ…。蓮夏…僕に何か隠してるでしょう…?」
すると、蓮夏の瞳が一瞬大きくなる。
「……何のこと」
「…どうしてはぐらかすの?何年一緒にいると思ってるの、動揺してるじゃん、それくらい分かるよっ!蓮夏っ…酷いよ…!」
唇を結んで涙を零す。僕の肩に触れた蓮夏の手に少しだけ力がこもる。
「俺は…咲太にとって、1番幸せな方法をとってるつもりだよ。」
「なに…それ…意味わかんないよ…」
幸せな方法ってなに…?
蓮夏は言った。
「君には、分からないよ…咲太には。俺の苦悩なんて…」
悩めかしい顔をした蓮夏が僕を見つめる。
なにそれ。なんでそんなこと言うんだろう。僕はただ、…蓮夏のことを知りたかっただけなのに。蓮夏のことを、理解しようと思っただけなのに…。
そうだ、蓮夏はいつだって、僕に肝心なことは何一つ教えてくれない。優しい愛を注ぐだけ。僕が振り向き掴もうとすれば、蓮夏は動揺するのだ。…僕は、ずっと何もせず大人しくしてろっていうの?なのに一緒に住もうって言うの?…僕が、おかしいの?…僕が蓮夏のことを、知ろうとしたらいけないの?
僕は蓮夏を見つめながら眉を下げた。
「…はっかなんか、大っ嫌い……」
僕は瞼を閉じ、涙を零した。
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