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「け、剣術ですか…」
俺の答えに、皇子の顔は引きつった。
「はい」
「他には?」
「他ですか………」
公式的なものとして、答えられるのはなんだろう。
「登山などですかね…」
間違いではないが、順位は低い方だ。
王家の人間として対外的な、それ相応の回答は必要なことだ。
「………フォルダムは、とても活動的なんですね」
「シアン様は何がお好きなのですか?」
先程から明らかに皇子はテンションが落ち始めているので、話の流れを変える。
「僕は舞とか、楽器とか、お茶とかが好きです。皇子らしくないですけど」
本当に、そうだ。
けれどそれを好きと言える環境に彼はいるということだ。
自国を大きく見せようとすることも、それを担う必要もないのだ。
「いいえ。自国の文化を愛するのは素晴らしいことだと思います」
冷めていく頭で、都合のいい言葉を使う自分が見える。
真っ直ぐに発言を受けとった皇子の顔は、みるみる明るくなった。
「シアン様はどの様な舞がお好きなのですか?」
開けた質問をすると皇子はとても饒舌に語り出した。
それは侍女が退出の時間を知らせるまで続いた。
「フォルダム、明日は何をなさるのですか?」
帰り際、自分の話ばかりしてしまったのに気づいて俺の予定を聞いてきた。
「明日はこの国にいるセザンヌの人間達と会おうと思っています」
セザンヌからアーヌへ、仕事や結婚、縁などで移住を決めた国民も少し前から多い。
王国からも大使として赴任している高官にも会うつもりだ。
最も会うのは国王や、王太子である兄上であり俺はその場にいればいいし、自由時間も多い。
「そうですか。…あの、お時間があったら僕も会いに行ってもいいですか?」
「はい、是非いらして下さい」
まぁきっと、皇帝陛下の許可は下りないだろけど…
「殿下、そろそろ…」
「ありがとうございます、絶対、絶対ですよ。お休みなさい、フォルダム」
最後の方は侍女に押される形で部屋から出された。
彼女がドアを閉めると、「申し訳ありません」と謝られた。
「いえ、こちらこそ遅くまでお邪魔してしまい」
「それもそうですが……、いえ出口までお送り致します」
彼女が先に歩き始めると、疲れがどっと襲ってきた。
立場が上の子供と話すのは、神経を使うものだとつくづく思った。
それが分かっていたのか、出口着くまで侍女は一言も喋らなかった。
「それでは、失礼します」
「ありがとうございました」
「王子殿下」
「はい」
「……、どうかお許しください」
「は?」
俺の声が聞こえた筈だが、侍女は何も答えず一礼すると元来た道を帰って行った。
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