アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
新しい場所
-
半年後ー
フォルダムは後継者がいないルバートという地方の新しい公爵となることが決まった。
そこはセザンヌ随一の漁港を有する、海に面した土地だった。
領民は主に漁業で収入を得ており、その金で米や野菜を買っていた。
一年を通して様々な魚が取れ、他の領地や王宮にも献上している為領民の暮らしは比較的豊かな方であった。
ただ、その土地柄度々起こる海賊からの襲撃が代々の領主の悩みのタネだった。
ーーーーそしてもう一つ、フォルダムにも悩みのタネができたのだった。
「フォルダム様!」
金切り声に、姿が見えなくても憂鬱になる。
そんなフォルダムをよそに現れたのは、まだうら若き乙女だった。
「御機嫌よう!今日もいい天気ですね!」
「そうですね、アンナ殿」
乙女は現公爵の一人娘だった。
そしてフォルダムの婚約者(仮)である。
臣籍降下した王子が、新公爵として最も上手く収まる方法は言うまでもない。
「フォルダム様、聞いてください。昨日友人の結婚式に出ましたの!そしたらもう…」
彼女の話に適当に相槌を打ちながらフォルダムは現実逃避した。
肥沃な土地がいいので多少のことは我慢すると重鎮達と取引をしたが、ここまでとは。
アンナは決して悪い人間ではない。
ただ領民よりも自分を優先したりと、どこか構ってもらいたいという思いが目に見えて面倒くさいのだ
何か、彼女との結婚しなくてもいい正当な理由はないだろうか…
結婚式と爵位を継承する任命式は同時に行われる。
期限は後半年だ。
ため息を堪えていると、頭上をカモメ達が横切っていった。
海辺で暮らしてきた彼女達には珍しくもない光景だが、フォルダムにとっては新しいものばかりだ。
ふと昔読んだ書物の中に『比翼の鳥』という伝説の鳥がいたのを思い出した。
比翼の鳥は一つの目、片側にしか羽がない為対になる雌雄が一緒ではないと飛べないのだ。
自分の運命が分かると言った彼も、そういう思いで番を探し求め、生きていたのだろうか…
帰国してから偶に届く手紙は、簡素な内容な物だった。
最後に俺が『結婚するだろう』と書くと、返事は来なくなった。
運命は、やっぱり俺ではなかったのだ…
「…して頂いてもよろしいですか?……フォルダム様?」
「え、すみません、カモメの声がうるさくてよく聞こえなくて、もう一度仰ってもらってもいいですか?」
「あら、時期に慣れますわよ。それで今度、王都に私も行こうと思っております、お時間があったらで良いので、案内して頂いてもよろしいでしょうか?」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 30