アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
、
-
「やぁ、ごめんね勝手にお願いしちゃって」
「いえ、私でよろしければ是非お供させて頂きたく」
翌日、既に入っていた公務を終えると皇太子の元に連れていかれた。
「アーヌであった時から喋ってみたいと思ってたんだよねフォルダム君とは」
「恐縮です」
ベラベラと喋る皇太子に警戒心を覚える。
この前会った時はこちらにそれほど興味はなかったはずだ。
「今日はオペラを見学させてもらえるらしくてね、フォルダム君も見たことあるんでしょ?」
「ええ、はい。カナリアの旅立ち、ですよね。何度か見ています」
「過去の事件をアレンジしたんでしょ。貴族の娘が婚約者の元を逃げ出して、好きな平民と結ばれる、王道のラブロマンスだよね」
こちらが説明を付け足す必要もなく皇太子は内容を知っていた。
きっと彼は俺を分からない所を補佐の為に読んだのではない。
「間もなく出発の時刻です」
侍従に声をかけられ、馬車に向かうと当然のように同じ馬車に乗り込むよう促された。
向かいに座り、扉が閉ざされると皇太子はにっこり笑った。
「やっと二人っきりになれたね。君にはたくさん訊きたいことがあったんだ」
「なんでしょう?」
「なんでシアンから求愛されたのに結婚なんてするの?」
やっぱり、そうか…
「…殿下、恐れながら、シアン様と私は同性です。結婚はできません」
「ふーん。確かに俺もいきなり男に告白されたら、引くかもな…。
でも、フォルダム君は皇帝陛下にシアンのことよろしく頼まれたのに、ちょっと無責任じゃない?」
「しかし…殿下はいいのですか?シアン様の相手が私などで。私はもうすぐ臣籍に降りますし、子供も残せません。シアン様にはきっと相応しい女性の方が」
「ヒナホ殿が、どうして皇子を産んだ今もただの舞姫なのかご存知ですか?」
「いえ…存じあげません」
「散々皇帝の寵愛をあの方は断っていらしたからですよ。
猫の世話で精一杯だとね、罪なお方だ。
シアン様が生まれるずっと前、側室の位も、式部省雅楽部での地位も、あの方はいらないから自分の時間を猫と一緒に過ごしたいと、そう皆の前で言ったことがありますからね、今でもそれを気に食わない後宮の連中はあの方に職位を与えはしないのです」
「………」
「それと同じ血が、シアンにも流れてると思うと、ゾッとしないか?」
もし皇帝が彼女を不敬罪としていたら…?
ヒナホ様は命がけの、とんでもないことをしたんじゃないだろうか
「俺はシアンの相手がフォルダム君でよかったと思ってる。
国の野心ある貴族たちよりも、明日どうなるか分からない民よりも、何処か仲の悪い国の誰かでもない。
国交があって、平和主義でまあまあいい暮らしをしている元王族と一緒にさせた方が安心だ。その運命とやらが存在するならな」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 30