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「殿下も運命を信じておられるのですか?」
「信じてるよ、嫌ってほど」
おかしな一族だ。
大陸の支配者と言われるアーヌの皇族の誰も彼もが、運命というものに従おうとする。
「…この国では、同性婚は許されていません」
「だったら法律を変えればいい。現に150年前アーヌでも、同性婚が認めらていなかった」
「しかし私には婚約者が…」
「なぁフォルダム君。俺は提案をしているわけじゃないんだ。
シアンを娶れと、言っているんだ。
君が誠実な対応をしてくれるのなら生涯、アーヌが後ろ盾になって協力しよう」
それは喉から手が出るくらい、魅力的な条件だった。
「私の新爵位の継承には、公爵の娘と結婚しなければいけないのです。だから」
「君は、よほど体面を気にする男なのだな。
皇帝からの勅令という形にすれば、表立って反対する者もおるまい。
その娘の嫁ぎ先も新たにアーヌで探してやる
別に相思相愛なわけでもないのだろう?」
「どうしてそんなに私とシアン様を一緒にさせたがるのですか?」
「理由はさっき言っただろう。それに兄として弟に幸せになって欲しいのは事実だ。
ただでさえ厄介な所に生まれてきたんだから」
そう言った彼の顔は嘘をついているようには見えなかった。
腹違いでも兄弟仲はいいらしい…
「それにフォルダム君だってシアンのこと嫌いなわけではないんだろう?」
「……そうですが、考えさせてください」
「君実は俺の話、全然聞いていないんだな。
これは提案じゃないって言っただろう。
今腹をくくるか、数日後に皇帝から勅令が来るかの差だ」
「間もなく劇場前にございます」
外から侍従の声が聞こえた。
話し合いは何も解決しないまま、馬車は止まり扉がノックされた。
「お待たせいたしました。どうぞお降りください殿下」
「ありがとう」
さっきまでの威圧的な雰囲気は消え、優しい笑顔で答える皇太子がそこにはいた。
「素晴らしいな、セザンヌのオペラ座は」
「はい、先先代の王妃が大のオペラ好きでございましてこのオペラ座もその時に建設いたしました」
「そうなのか」
待っていた支配人からの説明を受けながら、王族用の席に案内された。
「お飲物をお持ちいたしたした。それではごゆっくりお過ごしください」
「ありがとう」
支配人が下がり、二人きりになると程なくして開演のブザーが鳴った。
舞台のカーテンが開くのを今かと待っていると「この劇が終わる前に決めておけよ」と隣から言われた。
聞こえなかったフリも出来ず、悶々としているといつも同じ劇が違うものに見えた。
貴族の地位も名誉も捨てて、好きな男の元へ走るヒロインの度胸と自由がとても危なっかしく、眩しかったのだ。
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