アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
、
-
「俺もフォルの力になりたいから何か手伝って欲しいことがあったら言ってくれ」
「ありがとうございます、兄様」
久しぶり会った兄に励まされた後の来客は今日はもう来なかった。
恐らく明日の朝一番はアンナの父の公爵が来るだろう。
ルバートの公爵になれるかがこの問題の一区切りだ。
………自分でも強欲だと思う。
けれど目の前にある掴めそうなチャンスをみすみす逃すような事は出来なかった。
やっと俺の人生が始まり出したのだから。
翌日。最初の来客はやはり公爵だった。
「私の耳に入った愚かな噂と殿下のお考えは違うと思っています」
「公爵」
「一体どういう事なのかご説明して頂きたく」
「本当に申し訳ないと思っている」
シアン様のこと、アンナとは結婚しない事、皇帝と皇太子との約束の事、公爵の継承は行うつもりである事を伝える。
「そうですか」
「本当にすまない。貴方がたを決して悪いようにはしない」
「そうですね。大国であるアーヌに我が国は、まして一介の貴族である我々は逆らえません。
しかし殿下、男に負けた娘を世間は笑うでしょう。そしてその傷を娘は決して忘れられないでしょう。
我々と交わした約束を守らなかった貴方を、ルバートの領民達は決して許さないでしょう」
重い彼の言葉は心にのしかかってきた。
公爵は静かに怒りに燃えていた。
彼もまた立場が上の人間に逆らえないのだ。
民が貴族に、貴族が王族に、セザンヌがアーヌに逆らえないこの社会の縮図として。
逆らうには大きな力がいる。一人では決して無理だ。
「お話がもう無いのでしたらこれで下がらさせて頂きます」
「すまなかった、公爵」
「殿下からの謝罪の言葉は今後もう結構でございます」
自分よりも倍歳をとった背中が扉の向こうに消える。
自分は大きな力を得たのと同時に、誰かの人生を捻じ曲げたのだとこの時強く思い知らされた。
セザンヌ建国以来の大問題は日が経つにつれて国中に広がっていった。
ここ数日は考え直せという彼方此方からの使者が宮を訪れていたが、皇帝からの勅使が来て以来それはピタリと止み、代わりに王族の身分を返上しろ、アーヌの皇子の男娼などと書かれた紙が届いているらしい。
届いているらしいというのは、残ってくれた侍女達が俺に見せるには酷過ぎると、届いた時に隠してしまうからそれが実際どのくらいなのか分からないのだ。
「殿下、皇太子殿下がお見えになっております」
「ああ、今いくよ」
応接間に行くとそこには正装に身を包んだ皇太子がいた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
21 / 30