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「やぁフォルダム君」
「お久しぶりでございますね、殿下」
「ちょっと痩せたかな?」
「そうかもしれません。セザンヌを発つのですね」
「うん。楽しかったよこの国も。弟の伴侶も見つかったしね」
「………そう、ですか」
「後悔してる?腹を括ったこと」
それはまだ瘡蓋にもなっていない生傷が、爪で引っ掻かれて血を流す。
「……していませんが、少し辛いですね」
だって後悔してると言ったら、今まで失ったものが全て意味がなくなる。
「外の様子は知ってる?」
「大体は、法の改定が始まったんですよね」
同性婚が禁じられているままでは、議会も承認できないからだ。
苦肉にもアーヌの法を参考にするらしい。
「どの位かかるんでしょうね」
「少し遅くてもいいからしっかり考えて欲しいな。この法はお前だけじゃなくて、これからの同性婚を望む者達の希望になるんだから」
「何言ってるんですか?そんな人いませんよ」
シアン様の運命が何故か俺だっただけだ。
この国で同性愛者なんて見たことがない。
「いるよこの国にも。何処にだって同性愛者は、世の中が普通だと思っている事の外側の人はいる。男でも、女でも、民でも、貴族でも、皇族でも、ただ誰にも言えないだけなんだ。自分が他の誰とも違う事に恐怖を覚えながら、皆んなと同じように生きようと必死に隠して」
まるで自分が経験した様な言い方だ。
「殿下もそうなんですか?」
「俺は違うよ。ただ150年前のアーヌがそうだっただけだ」
この国にもいるのだろうか…外側の人間が
「落ち着いたらシアンに会いに行って欲しい。きっとこの状況のセザンヌに行く許可は陛下から下りないだろうから」
「そうですね…なんだか皇城での日々が随分と昔のことの様です」
「若者の人生は毎日が変化の連続だからな。…あぁでも冬に行くのはやめた方がいい。きっとこの国の馬車じゃアーヌの雪は耐えられない」
『これが冬になると全て凍るんです』
『僕と一緒ならいつでも来れますから』
彼はあの日からずっと俺の事を慕っていてくれたのだと分かると血だらけの傷に包帯が巻かれていく様な気がした。
俺がシアン様に会いに行けるようになったのはそれから2年経ってからだった。
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