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●●しないと出れられない部屋の巻⑸
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「ゆき、ちゃん…」
チェシャの表情が歪んで、涙が溢れる。
「ふぁ…あッ」
年上の天花よりも、きっとチェシャの方が死に近い。
けれど死を恐れてはいない。彼にとって最も恐れていることは死ぬことではないのだ。
「うわぁ!」
チェシャは、声を上げて泣き始めて天花はそんなチェシャの体を抱きしめた。
「嫌だったんだな?」
こくりと小さく頷いたチェシャは、大粒の涙を流しながら天花の胸で声を上げて泣いていた。
チェシャのことだからきっと単純で利己的な感情なのではないだろうかと思う。嫌とか好きとか、そういう単純な感情が積み重なって、チェシャの心を締め付けたんじゃないだろうか。
いろんなことに慣れている彼の弱った心を追い詰めてしまう何かはきっとチェシャ自身の内面にある。具体的に1つ1つどんなことがあったのかを聞き出すつもりはない。なぜなら、全てを理解することはできないからだ。それにチェシャ自身も詳しく話すつもりはないだろうし、天花が理解できないのもわかっているはずだ。
だから天花はいつだって軽くて痩せ細った小さな体を、大きな体で抱きしめる。そこには無駄な愛憎劇はなく、ただ無駄に喋るチェシャと呆れる天花のいつものやりとりがあるだけ。
「ゆきちゃんにっ…ゆきちゃんにもう会えないんじゃないかと思って…っ」
天花は、チェシャの細い肩を撫でた。
声を出して泣いているチェシャを抱きしめる。
チェシャは優秀な殺し屋だ。そうでなければ、こんなにも長く天花の元を訪れることはできないだろうし、関係も続いていないと思う。
だからこそ、天花はチェシャが主張する口先だけの言葉に心を掻き乱されることはしない。いちいち、チェシャが主張することに感情を乱していたんでは、愛猫を愛でることはできない。
「らしくないな」
死に慣れているチェシャでさえ、殺されてしまうんじゃないかと震えることもあるのだろう。
「だってだって…っ毎日、チンコ取れるんじゃないかって思うくらい射精させられるんだよっ!!」
「…そうか」
それは、殺し屋としての彼に必要なことなのかという疑問や、会話のレベルの低さを置いておいて、それがチェシャの溜まりに溜まった不平不満。ようするに、ただの愚痴。
「あといろんな男に前とか後ろとか関係なく、チンコ突っ込まれるし…二輪刺しとか…」
「そ…うか」
天花はあまり鮮明に想像しないことにした。
どこか、アニメや空想上の出来事のようにチェシャの話を聞くことにした。
「…粗ちんばっか相手にしたから、もう嫌」
チェシャは、濡れた蜂蜜色の瞳を天花に向ける。
「ゆきちゃんに酷くされてる妄想して犯されたこともあったけど、それも飽きたし…」
天花の首にチェシャの腕が回る。少し鼻が赤い。
「ゆきちゃんに犯されたい」
グズグズと涙声のチェシャは自分の頬を乱暴に拭った。
天花を挑発する瞳は、どこか乞うような危うげな色気を孕んでいた。
「散々、男に犯されたんだろ?」
「うん」
チェシャが自らの涙を乱暴に拭った後、無骨な天花の指の腹がチェシャが流した頬を優しく撫でる。
上目遣いのチェシャの表情は幼い。黒黒しくまとっていた雰囲気は今はなく、涙と共に流れてしまったかのようだった。
「じゃあ、もう男に犯されるの嫌なんじゃないのか?」
「ねぇ…ゆきちゃんそれ、本気で言ってるの?」
チェシャは、ムッと口を尖らせた。いつものように天花の自制心を翻弄する。
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