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第2章–1 はじめての仕事
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翌日。
保住に呼ばれた田口は、目を丸くした。
「星野一郎記念館の企画、ですか?」
「そういうこと」
それで、昨日は思う存分堪能させられたという訳か。
「配属されて1か月が経ったからな。新卒でもあるまいし。いつまでも遊ばせておく訳にもいかない」
「お、田口くん、初企画だね」
渡辺が茶々を入れてくる。
それを見て保住は苦笑した。
「渡辺さん、彼は前職で農振係ですから。企画は、お手の物ですよ」
「そんな……」
分野も違うし。
不安。
「大丈夫でしょうか。おれで」
「ダメだったら途中で取り上げるかもな」
保住は、悪戯を含んだ笑みを見せる。
この人。
冗談も本気だから怖い。
田口は、息を呑む。
「そう気負うな。初めての企画だ。そう期待はしていないから大丈夫だ」
「しかし」
「明日までに初稿出せ」
「え!」
明日?
「いくら考えたって同じだ。明日だ」
保住は、そう言うとパソコンに視線を落とす。
もう話は終わりということらしい。
田口は、関連資料や要綱を手にうなだれて自席に戻った。
「そう落ち込むなよ」
「そうそう。誰だって最初は初めてだ」
谷口と矢部は、こそこそと慰めの言葉をかけて寄越した。
「しかし、あまりにも唐突で、無謀な……」
仕事に関して、あまり愚痴をこぼすような男ではないが、さすがにきつい注文だ。
大きくため息を吐いた。
しかし、そうも言っていられない。
田口は、両頬を手で軽く叩き、顔を上げた。
「やってみます」
「お、田口ちゃん男前」
「惚れ惚れしちゃうな、おい」
「からかわないでください」
二人がにやにやして見ている中、田口は、書類に視線を落とした。
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