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第2章–26 朝が来る
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「ここはどこだ?!」
大きな独り言に起こされたのは、早朝の5時。
田口は、びっくりして跳ね起きたせいで、ソファから転げ落ちた。
「おれの家です……」
そう呟きながら寝室を覗く。
彼は、半分寝ぼけているのか、ベッドの上に座ったままだ。
「おはようございます、係長」
田口の声に反応して、彼は目を見開く。
「なぜお前が?」
「ここはおれの家です。昨日、おれの歓迎会の時に寝てしまって。渡辺さんたちに言われたので連れ帰りました」
記憶を辿ろうとしているのか。
保住は、目を細めて黙り込むが、思い出せないようだ。
諦めて、ため息を吐いた。
「すまない。覚えていない」
「でしょうね。おんぶして連れてきても全く起きませんでした」
「おんぶ!?」
彼は、苦笑する。
「それはそれは。ものすごく迷惑をかけたな」
「いえ。係長軽いですから。なんてことないです」
目の下にクマが出来ている顔を抑えて保住は、ため息だ。
「またやらかしたのか……」
「また?」
「飲みに行くと、寝るか記憶がないか。知らない人間の家で目覚めることが多々ある」
「係長……」
どれだけ私生活もだらしがないのか。
田口もため息だ。
「隙だらけだからですよ」
「そうだろうか。これでも自分なりに警戒しているつもりだが」
「どこがですか……それよりも、もう少しゆっくり寝かせてくださいよ。昨日は係長を背負ってきて、いろいろして、寝たのが2時です」
「すまない」
「いいえ。……あの。風呂場とか使うならどうぞ」
「そうか。すまない」
彼は、そういうと、瞳の色を濃くする。
活動を始める気らしい。
そうなると、自分だけ寝ている訳にもいかないだろう。
田口は、苦笑いだ。
この人には振り回されっぱなし。
いいじゃない。
一日や二日寝不足でも。
今日、頑張れば明日は休みだ。
明日は、ゆっくりしよう。
そう思うしかない。
「タオル出しますよ。着替えありませんね。下着は新しいのあるかな?」
「いや。この時間なら自分の家に帰れるな」
「それはそうですけど」
「すまなかったな。田口」
自宅に帰ると判断をした保住は早い。
さっさとベッドから抜け出すと、側にあった自分の荷物を抱える。
「お前の家がどこだか分からない」
「そうでしょうね。送りますよ」
「車あるのか?」
「ありますよ。おれだって」
「車もないから、徒歩通勤なのかと」
「一応はあるんです。徒歩は好きだからです」
寝ぐせだらけの頭を撫でてから、田口は着替えをしに自室に戻った。
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