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第3章–3 蒸し風呂
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軽装になっても、室温が高く設定されているせいで、役所内は蒸し風呂みたいな暑さだ。
観光課に用事があって顔を出すと、みんな熱中症にでもなるのではないかというくらい、顔色が悪かった。
二階は市民の出入りがないものの、場所的に一階よりも蒸す。
ボタンが云々なんて言っていても、暑さにはかなわない。
「暑い、暑い」
渡辺は更にボタンを一つ外す。
「本当に暑いですね……」
さすがの田口も無駄口に混ざる。
この暑さ。
7月になって、ますます熾烈さを極める。
矢部は、すでに戦意を失い、ひたすらうちわで自分を扇ぐことに専念している。
谷口は、比較的痩せているので暑さには強いようだが、それでも汗を拭いてばかり。
集中力が欠如しているのが見て取れる。
「暑い……」
朝から食欲もないくらいの暑さ。
どんなことでも、我慢できる精神力を持っている田口ですら、仕事に向き合う気力が持てない。
売店で買って来た水をほおばる。
今日は何本目?
午後になって、二本は飲んだのだろうか。
自分の企画も大詰めで、こんなことをしている場合ではないのに。
それに、新しい企画書の提出期限も迫っている。
時間がないのに。
まだ初稿があげられていない。
みんなが集中力切れで仕事にならない中。
保住だけが、下を向いて黙々と書類を見ている。
「係長ってすごいですね。文句ひとつ言わずにやってますけど」
普段は、そんな話題を自分から振ることない田口だが、つい言葉に出る。
仕事をしたくない気持ちがそうさせているのだろう。
「文句ひとつも言わない」
谷口は復唱した。
「え?」
「文句ひとつも?」
矢部も同じ。
田口を除いた三人は、ぱっと顔を上げてお互い「しまった」という顔をした。
「やばい」
「係長の面倒をみるの忘れていた」
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