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第3章–4 蒸し風呂の悲劇
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「渡辺さん……」
田口には意味が分からない。
瞬きをしていると、谷口につつかれた。
「売店行って水買ってこい」
「了解です」
そう言って立ち上がったのと同時くらいに、渡辺が保住に声をかける。
「係長、あの、水分とらないと……」
彼が触れた瞬間。
黙々と仕事をしていたはずの保住が、机に崩れ落ちた。
「係長!?」
「係長ー!!」
部屋を出ていこうとした田口は、慌てて駆け戻る。
「昼飯食べているの見た奴?!」
渡辺の言葉に、一同は首を横に振る。
今日は大人しいと思ったら。
「係長……」
傍に駆け寄ると、保住は赤い顔をして息を荒くしていた。
「おれ、病院に……」
「どうした?」
課長の佐久間が駆けよって来ると同時に、文化課の扉が豪快に開く。
「うるさい、なにを騒いでいる」
「局長」
怒られる?
田口は、咄嗟にそう思う。
しかし、澤井は保住を見つけると、さっさと歩み寄ってきて、彼を抱え上げる。
「局長」
「熱中症だ。馬鹿者。いつも言っているだろうが。自己管理くらいせんか」
朦朧としている保住だが、彼に抱えあげられて大人しくしている。
声の主である澤井を見上げようとしているのだろうか。
保住の睫毛が痙攣している。
「すみません……」
そう聞こえただろうか。
田口は、ただただ、呆然として立ち尽くす。
「局長、あの」
澤井には、手が出せない。
「おれが連れていく。佐久間、後はお前に任せる」
「了解しました」
澤井がさっさと事務所から姿を消すのを見送って、不安げな一同に向かい、佐久間が声を上げた。
「ほらほら。仕事、仕事。ほうちゃんの分まで頑張るよ~」
ざわざわしているフロアは少しずつ落ち着つきを取り戻した。
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