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第3章–9 疲弊
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あれから。
1週間が経った。
結局、一度断られた面会には、タイミングがよく分からず、行けず仕舞いだった。
「アイタタタ……」
渡辺は、お腹を抑えながら書類を抱えて帰ってくる。
「大丈夫ですか?渡辺さん」
谷口は、心配そうに声をかける。
「キツイ……胃がやられてきた。おれには無理だ……局長の面倒をみるのは」
「おれでも無理ですよ」
矢部は、頷く。
「一生平がいい!」
渡辺は、そう叫ぶ。
「早く帰ってきて、係長!」
みんな泣きそうだ。
この1週間で振興係は、疲弊している。
係長代理の渡辺は胃を壊し、矢部はストレスで不眠らしい。
谷口も食欲がなく、ますます痩せている。
田口も然りだ。
眠れない。
仕事への集中力もない。
ここにくる前の自分に戻ってしまったようだ。
彼一人抜けただけでこの様か。
保住の影響力は、計り知れない。
明後日の金曜日に夏休み休暇をもらって、週末と合わせて二泊三日で実家に帰るつもりだったが。
とてもそんな気分にもなれない。
こんな調子では、効率も悪い。
保住が戻ってきても、がっかりさせるだけだし、仕事がたくさん残っていて負担をかけさせるだけだ。
田口は、大きく頷いてみんなを見渡す。
「もう少しですよ。頑張りましょうよ。このままでは、係長が戻っても大変になるだけですよ」
「田口」
「一週間経って、へこたれてきているのはおれも同じです。全く使い物にならなくてすみません。こんなおれが偉そうに言えることではありませんが」
「分かっているけど……」
先の見えないトンネルみたいで、頑張れないのだ。
「おれ、局長に聞いてきます」
「え?!」
「係長の容態とか、退院の目処がどうなっているのとか」
「嘘だろ?」
「行ってきます」
保住の容体は佐久間でも把握していない。
なら、澤井に聞くしかない。
ほかに術がないから。
「田口?!」
「やめておけ!」
「減給だぞ」
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