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第3章–11 局長の頼み
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「なかなかいい選択だ。あいつは、全く体の管理には無頓着で知識もない。教えてやれ。おれは部屋が別だし、四六時中見張ってるわけにも行かん」
「局長」
「それから、保住がいない間、お前が資料の説明に来い」
「え!?」
まじか。
「どうやら、お前たちとおれの言語はかけ離れているらしい。今まで気がつかなかったが、保住の通訳があって初めて理解できる。あいつほどではないがお前の説明も、なかなか理解できそうだ。文章の意味がわからんなんて、仕事に支障を来す」
そう言う事か。
保住フィルターを通ることで、簡潔に端的に整理された書類が澤井の所に上がる。
そのお陰で、澤井の仕事は滞りなく進んでいたようだ。
それが、一週間が経ち、綻びが出ているのか。
その、保住の役割を代行しろと言うのか。
無理。
田口は、クラクラするが仕方がない。
「わかりました。しかし、金曜日は夏休み休暇をいただいております」
「こんな忙しい時に」
「すみません。迷ったのですが、実家で色々とあるものですから」
澤井は、ふんと鼻を鳴らす。
「休みの理由など問うつもりはない。タイミングの話だ」
それは、そうだろう。
田口は「すみません」と頭を下げる。
「仕事に戻れ」
「失礼します」
いらぬ仕事は増えたが、保住の状況は分かった。
目的は果たしたから、少しでも早くこの部屋を出たい。
そう思ってドアノブに手をかけると、澤井から声がかかった。
「お前の故郷はどこだ?」
意外。
田口は振り返る。
「えっと。雪割町です」
「高速で一時間か。米どころだな」
「はい」
「農家か?」
「はい。昔ながらの農家です」
自分のプライベートに興味があるようには見えない。
澤井の真意が分からず、戸惑いながら答える。
「お前に頼みがある」
「はい?」
澤井は、真面目な顔で田口を見ていた。
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