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第4章ー2 あらやだ!
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田口の青い車が敷地内に入ると、中からでっぷりした女性が出てくる。
「おかえり!」
彼女は、朗らかに笑う。
人の良さそうな。
「母さん、ただいま」
「大変だったね……で?」
彼女は、ワクワクした視線で田口の車を見る。
保住は、ペコリと頭を下げて車から降りる。
「保住です。すみません、大変ご迷惑をおかけします」
「あら……」
「母です」
田口の母親は、目をパチクリさせてから笑う。
「あらやだ!銀太の上司の方って言うから、おじさんがくるのがと思った!」
「母さん……係長は一応、年上だからね」
「そうなの?!銀太より断然、若く見えるわ」
田口より小柄ではあっても、横幅は優っている彼女は愛らしい。
「銀太、戻ったか」
きゃっきゃとしている母親を見て苦笑していると、農作業を終えた父親と祖父が帰ってくる。
「係長、父と祖父です」
保住は、深々と頭を下げる。
「この度はお世話になります」
「なんだぁ、係長さんって言うからおじさんがくるのがど思った」
「んだな」
みんな一様な反応。
一々説明するのも面倒で、田口と保住は笑ってやり過ごす。
「部屋だけはいぐらでもある。家族も多いから人間一人ぐらい増えるのは、どってことないが……逆に、うるさくて休めないのではないがと心配すています」
父親は、はにかんだ笑顔を見せる。
田口そっくりだ。
外仕事をしているせいで、日焼けをしていて田口よりは黒いが、田口そのものか。
保住は、瞳を細める。
「いえ。ありがとうございます」
そこで田口は、祖父を紹介する。
「係長、祖父です」
「保住です。どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらごそ」
祖父は、寡黙。
にこにこしているものの、一言だけ告げて後はペコリと頭を下げた。
「とりあえず、中に入ろう。今日退院したばかりと聞いてます」
「自己管理が悪くて」
父親と保住が談笑しながら家に入っていくのを見て、母親は笑う。
「お父さん、楽しみにしてたのよ」
「え?」
田口は目を瞬かせる。
「だって、あんた。初めでじゃない?梅沢の人、連れてぐるの」
「そうだね」
「みんな心配してんだから。あんだ、人見知りだし。無愛想だから、友達とか、懇意にしてぐれる人、いないんじゃないがって」
図星。
さすが家族。
よく分かっている。
「係長は上司だし、頼まれただけだげど」
「頼まれるってことは、信頼されてるんじゃないの」
そうなのだろうか。
自分が?
なんだか実感がないが、そうなのかもしれない。
「なんだが、安心したわ」
母親の笑顔を見て、田口はよほどみんなに心配をかけていたのだと思い、少し胸が痛んだ。
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